姫が足下に広がるシロツメクサを器用に編んでいる。その隣で俺はパソコンと睨み合っていた。このご時世仕事は休む暇もないくらいある。働き詰めだった俺を心配して姫は外に連れ出してくれたのかもしれないが、悲しいことに文明の進化はコード無しでも機械の箱を世界に繋げてしまう。皮肉なことにデスクトップの壁紙はクローバー模様だった。四つ葉のクローバーは幸せを運ぶのよ、言っていた先代の姿が脳裏をよぎり、集中を乱される。そういえば四つ葉を見つけられた試しがないな、と視線を緑と白と黄色の絨毯に移すと「できました!」と姫の嬉しそうな声がした。次いで、視界に白と緑がちらりと移る。頭に乗せられたのは先ほど作っていた花冠で、白い花が編まれたそれを手にとってしげしげと眺める。
「すごいもんだな」
正直に感想を述べると姫は嬉しそうにふふ、と笑った。
「γにあげます」
「有難う姫。けどこれはアンタの方が似合いそうだ」
手にした花冠を頭に乗せてやると額の辺りですっぽりとはまった。黒い髪に白い花冠は良く映える。
「似合っているぞ、姫」
乗せてやってから貰ったものを返すのは失礼だったかもしれないとも思ったが、そんなことは心配しなくてよかったらしい。姫はなにがそんなに嬉しいのか幸せそうに微笑み「狐達の分も作ってあげる」と再びシロツメクサを取りにかかった。