拍手御礼SS(学パロラビュ)



大学校内をこれでもかと走る。

――何だってオレの法学部棟は東門からこんなにも遠いんだ。

オレの下宿は東門に近く、東門は法学部棟から一番遠かった。
考えなしに下宿を選んだ2年前の自分をこんな時ばかりは責める。
西門側の下宿にすれば良かったと後悔するも結局ユウの通う理学部棟からは近いので、一緒に住み始めた今となってはまぁいいかと思ってしまう。
今この瞬間ばかりは本当に恨めしいが。

校内を歩く人影は少ない。天候のせいだろうか。今日は雨が降っていた。
走っている今は傘を差すのも面倒に思える。

だって待ち合わせの時間は過ぎてるっていうのに。

その事実が余計に焦りを生む。
水溜まりを避ける一瞬の時間すら惜しく、そのまま踏みしめるとパシャンと水が跳ねた。

文学部棟の先を曲がって、開けた先が東門。その門の前に黒色の傘が見えた。
顔が見えなくても解る。あれは、



「ユウ!」



まだ距離がある中、オレは叫んだ。
雨音ばかりの校内に響くオレの声に、差した傘を少し持ち上げて



「おせぇよ、バーカ」



と。
言葉とは裏腹に、ユウは機嫌良さそうに笑った。


傘なんて置いてくれば良かった。そうしたら仕方なく半分差し出してくれて、ひとつの傘に入れたかも。
なんて。

でも帰る先は同じ家なんだから、たまには良くない?
珍しくこうして、待ち合わせて一緒に帰るんだから。



今日は待ち合わせてから帰ろうか






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