それは何の変哲もない朝の事。


いつものように家を出て、自転車を駅へ走らせた。

駐輪場のおじちゃんと挨拶を交わして、勢い良くスタンドを立てたら改札へ。
別に遅刻しそうってわけではないんだけど、この流れがなんとなく朝のリズムになってる。

パスケースに入れた定期で改札を抜けて階段を上がるとぴったりのタイミングで
電車がホームに入ってきた。


「今日もばっちり。」


小さく一人で呟くと、大きく開いたドアから降りてくるサラリーマンの波に流されないように
前に進んだ。




発車のベルと同時に乗り込んだ車内は相変わらず満員で、見慣れたとは言え
"すし詰め状態"ってこの事を言うんだと関心してしまう。


なんて事を考えながら顔を上げると、今日はいつにも増して車内の空気が重い。


だって、それもそのはず。

隣も前もその奥も、とにかくこの位置から見渡す限りはお疲れ顔の中年のおじさまが
顔を並べてるんだもん。


(せっかく今日も調子良く電車に乗れたと思ったのに…。こっち側のドアしばらく開かないし。)


ほんの5分前までとはうらはらに、だんだん下がってくる視界とテンションに肩を落としていると、
次の駅で下車する数人の乗客の間に出来た隙間を縫うように、伸びてきた手に腕を掴まれた。


「へっ?!」


口にはださないものの、いかにも迷惑だと言いたげなおじさまの横を抜けて、
腕を引かれるがまま足を進めると、ドアとシートの間の小さなスペースに体が納まった。


「??」




起こった事がよく理解出来ないまま驚きながらも、
とにかく周りのおじさまから解放してくれたお礼を言わなきゃと顔を上げて、
私はおもわず声にだしてしまいそうなくらい驚いた。


だってそこにいたのは間違いなく、校内でも生活指導の鬼と恐れられている
"土方先生"だったんだから。


こんな至近距離で見られたら化粧してるのがバレちゃう!


慌てて顔を下げても電車を降りてその日1日が終わるまで、心臓のドキドキは止まらなかった。




だけど、手を引いたのが私だった事に先生だって気づいていたはずなのに、呼び出しはおろか
廊下ですれ違っても全く何も注意されなかった。




それから毎朝電車に乗る度に、土方先生がドアとシートの間の隙間に立っている私が
押しつぶされないようにドアに手をついていてくれた姿を思い出して頬が熱くなるのがわかった。






この気持ちって一体何なんでしょうか…?


















拍手ありがとうございます。

以前にお題で作ったものを自己活用(出来たかどうかは不明ですが…;)
全くと言って土方さんとの会話がないのですが、ヒナタ的にこのシチュは萌です。
毎朝こんな風に守ってもらえるなら満員電車も怖くないですよね☆

拍手と一緒にコメント送信も可能となっております。こんなヤツにでも何かメセしてやろうという
心優しい方がいらっしゃいましたらサイトへのご意見・ご感想、質問etc・・・何か一言下のフォームから送ってやって下さい。
いただけると飛びあがって喜びますv

これからもこれを励みに頑張りたいと思います!どうもありがとうございました☆



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。