拍手ありがとうございます!以下「弟と兄」(訂正)わりと長いです。
脱出はこちらからどうぞ。
一番下に行きたい方はこちらから
--------------



カノジョができたんだってさ。へぇそう良かったね。

心にもない言葉で返すと見破られて軽くどつかれた。
本心を言ったところで本気で殴られるのは目に見えてるのに。
煩わしいったらないね。


シカマル12歳。
いかにもなランドセルが嫌で、自分で壊して市販のバックで通学する、ひねくれた小学6年生です。
日頃の行いがいいので先生方も何もいいません。
最近では更にひねりを増して、とうとう同性を好きになってしまいました。
父さん母さん、道を外れてしまった息子をお許し下さい。

…なーんつって言ってみるけど、それが悪いとは少しも思っていなかったりする。
そりゃあ親不孝なことこの上ないけど、例え許されなくたってオレは構わない。
そんな年頃なんだよ。ごめんね母さん。

だって江戸時代までは日本じゃ普通だったって聞いた。なのに、ねえ?いつの間にか西洋文化に毒されて非難の的になっちゃって、なんて可愛そうなんでしょうか。
男が男を好きになっちゃいけないって風潮誰が広めたの?
キリストかシマバラか。
恨むよペリー。

だいたい考えても見てほしいよ。
水族館じゃオスのペンギンがオスのペンギンに迫ってたし、テレビではオス馬がオスのポニーに発情してたんだよ?ホームセンターのカブトムシに至ってはオス同士でヤってる有り様(笑)
人間はもっと愛に寛大になるべきだと思うね。
まぁペンギンにしろ馬にしろ、相手にどつかれてたけど。


そう、拒否されてた。

同性を受け入れるなんて、無意味なことに意味を見いだせるのは人間くらいだ。
すごいもんだね人間ってさ。
動物と人間との違いがこころのありかなら、この想いは性欲以上の純粋なものだと思わないか?

ねぇ、アンタは分かってくれるだろうか。
かなり無理な話だけど、目を逸らされたって構わないんだけど、聞いて欲しい。

アンタのことが好きで好きでたまらないんだ


兄さん。





一緒に帰ってるところを見かけたことがある。
キバと、茶髪のふわふわした髪の女。
蹴り飛ばしてやりたかった。
仲良く並んで歩く2人の間に割って入ってやりたかった。

あんたら邪魔なんだよね。
いちゃつくんなら他でして?

きっとキバは怒鳴って、その後変に意識してぎごちなくなる。
積極的に見えて本当は照れ屋だから、どう反応するかなんて分かってんだ。
オレの方が長く一緒にいたんだ、オレが一番分かってるんだよ。



「キバには勿体ないよ、あんなビジン。別れちゃえってば」

冗談の振りして本気で言ってみたことがある。
怒るかと思ったのに悲しそうな顔された。
そん時は本当にカノジョのことが好きなんだと、傷つけてしまったと思った。

それが原因かどうか分からないけど、その後別れたって聞いた。
振られたんだって。



「つーかキバ言うな。兄ちゃんっつえよ。生意気」

やだよ。

「キバはキバだろ」
「呼び捨てすんなっつってんの」

21センチ

キバとオレの差はこれだけだ。
あとは負けてるつもりないよ。

「好きだった?」
「…イキナリ何だよ」
「カノジョ」

ベッドに寝転んで雑誌を読んでいたキバの手が止まる。
いくら読んでる振りしてもページが進んでないからすぐ分かる。

「キスした?」
「お前に関係ねぇ」

雑誌に目を落としたまま、こっちを見ようともしない。
オレは関係ないんだって。本当に関係ないなら、この薄い胸は痛まないはずなんだけどなぁ。

「セックスは?」
「…なっ!お前な!」

耳まで真っ赤だ。
したのかしてないのか分かんないな。

高校生ともなれば、それくらいやってて良さそうなもんだけど、

したのかな。

そのキバの手が女に触れたの?
その唇が
腕が


キバのゆびが、白いおんなの体に触れる。
愛撫恍惚喘ぎ熱い吐息。



…むねがいたい。
頭の中で赤い光がちかちか瞬いた。
胃のそこに蛇がとぐろを巻いてるみたいだ。
視界がくらくらする。


「したの?」
「…お前にはまだ早ぇよ」
「興味津々なお年頃ってやつなんだ」
「小学生のくせに」
「早熟だから」
「意味わかんね」

どんな感じするの
どんな風に?
どきどきした?

今、オレは死にそうなくらい心臓がばくばくいってる。

唇を離すと、キバの大きな瞳が見えた。
一呼吸置いてまた合わせると、固まっていた体がやっと反応した。

「…ちょ、なに…!?」
「オレもしたい」
「は…!?」

オレを押しのけようとする手を逆に取り、指にキスをすると過剰なくらいキバの体がビクッと震えた。
瞳だけで見上げると、困惑しているのが分かった。

「オレも、キバとしたいよ」
「…っ冗談…」
「マジで」
「お前まだ小学生だろーが!」
「関係ない」
「大アリだ!」

キバの腹の上にすとんと座り込む。
大して重くなさそうなキバの様子を見ると、自分が子供なんだと言うことを思い知らされる。
子供だけど、気持ちは本物なんだよ。

「お前バカにしてんのか…ッ!? からかうのもいい加減ッ」
「本気だけど」

真っ直ぐ見据えると、それから逃げるように揺らいで、キバの瞳が下に落ちた。

「キバと、したいんだ」
「は!?…お、男だぞ…!」
「それこそ関係ない」
「関係ないわけあるかよ…!それに兄弟でなんて…!」
「だから、だよ」


「生まれてからずっと一番近くにいたんだ。ずっと見てきた。追いつけない背中ばっかりだったけど」


追いつきたくて、追いかけて


「オレはいつの間にか、キバに惚れちゃってて」


「ずっと、好きだったよ」
「…ッ、シカマル…!!」

「オレはね兄さん。アンタが好きなんだよ。アンタじゃないとダメなんだ」

突き飛ばして逃げようとすればこんな体簡単に吹き飛ぶはずなのに、キバがそれをしないのは合意の意味ではない。
けれど、今はそこにつけこまさせてもらう。
年齢と性別の問題ってやつは、思ったよりも壁が高いんだ。


「ちょ…っと、待てッ マジ、やめろ…ッ」
「でも、起ってる」
「…ッ」


オレより背が高い、大人になろうとしている体。
本当に嫌なら、力づくでどうとでも出来るはずだよね。

…ごめんね

「シカ、マ…ル…ッ」

これからすることはキバにとって苦痛でしかないんだろう。
だけどオレは、自分の欲望をぶつける以外やり方を知らなくて。
言葉で言ったって子供の言葉なんて伝わらない。
態度で示しても駄々をこねてるようにしか見えなくて。


オレがもうちょっと大人だったら、キバにこんな顔させずに済んだかもしれない。



バカな弟で、ほんと、








「…ごめん」

事の後、壁の方を向いたままピクリともしないキバの様子が気になって謝った。
怒ったのかもしれない。
嫌われたとしても仕方がないことをしたんだ、一言も口をきいてくれなくても当たり前だ。
キバが抵抗しなかったのは理由にならない。
そういう優しさを持ったキバだから好きになったのだ。

「…はぁあああ〜」

深いため息が漏れた。
わざとらしいそれに、意外にもそれほど怒ってるわけではないことが分かり安堵した。

「…こんなことになるんだったらあん時ヤっとけば良かった…」
「…?」
「元カノ」

ぼそりと呟くように出た思ってもない言葉に意表をつかれた。
元カノ?
ヤっとけば良かった?

「向こうから誘われたんだけどさ、なんか…やる気がしなくって。それで振られたんだけど」

「でもドーテイ捨てる前にしょじょ奪われるとは思わなかったなー。しかも実の弟になんてさぁ」

「べろチューも初めてだったんだぞ…。それが小学生の方が良く知ってるってどういうことだよまったく」


ちょっと待て。
ドウテイ?ショジョ…はともかく(笑)、初めてだったって?

「プライドずたずた」
「……!!」

てっきりオレは、キバは元カノと済んでいて、それで嫉妬したっていうのに。
それならもっとちゃんと順番踏んでキバを落とせばよかったと、強姦まがいのことをした自分に嫌悪した。

「…あんなこと…どこで覚えて来た」
「…本」
「本?」
「エロ本。キバがベッドの下に隠してるやつ」
「見たのか!?」
「母ちゃんだよ。掃除してて見つけたんだって。男の子だから仕方ないわねって」
「マジかよ〜はぁ…最悪だ…」

ばったりと枕に倒れこむキバに、後ろめたさを感じながらそういえば気になっていたことがあったことを思い出した。

「おんなじ女の人ばっかだったけど、あーいうの好み?」
「あ?」
「黒髪で切れ長美人系」
「へ?」
「細身の美乳タイプで…、違うのかよ?」

キバの方に向き直ると、何故か逆にまじまじと顔を見られた。

「なに?」
「…あり得ねぇ…」
「なにが?」
「何でもねぇ、知らねえ」

急に理解出来ず、手を伸ばしてベッドの下のエロ本を取り出しパラパラとめくった。
同一人物ではなかったが、どれも似たタイプだった。
こうして見るとキバの元カノとは全く違う。
元カノは美人ではあったが割と派手な方で、雑誌の女はどちらかというと自分と近い感じがした。


「なっ!てめ何見てんだよ!」

気づいたキバが雑誌を奪い取り、慌てて隠した。
顔が赤いよ。

「…」
「な、なんだよ」
「もし、」

「もしさ、オレが女でタメで血繋がってなかったら、オレと付き合ってたかもしんないね?」
「…っざけんな!!クソガキ!」


シカマル12歳。
実の兄が恋しくてたまらない、ひねくれた小学6年生です。
おしべとめしべが受粉して種が出来るという、いきものの基本的な道から外れてしまったけど、人として、心を持った人間として、今はこの気持ちが誇らしく思える。
今はまだ身長だって小さいし力もないけど、あと6年もすればキバとそう変わらない。
カミサマは許してくれなくても、日本には八百万の神がいるから大丈夫だろう。

オレが生まれて12年。
キバと出会って12年だ。
キバのことはオレが1番知ってる。
これだけは他の誰にも負けないよ。

だいすきなんだ、兄さん。






----------
そして数年後、年下鬼畜攻めが出来上がる、と。


---------





ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。