団子奇譚 18





「左近殿。佐吉の貴重で可愛い写真いらんの? 小西コレクションを総結集したこの佐吉写真集をッ!?」

小西殿は、信じられないものを見るように目を見張る。心なしか声が震えているような……

「信じられへんわッ! マニア垂涎の写真をたーぷり収めた俺の自慢のコレクションやのにッ!! アンタ、それでも佐吉のスィート? ハニーのベリィプリティ生写真を目前にして何とも思わへんの? 何で、キッパリ断って保身に走るねンッ!! 愛はないんか愛はッ!!! って、もしかして、アンタ不能とちゃう? きっとEDやEDッ!!」

一気に関西弁の強烈さそのままに捲し立てられる。


     えぇッ!? ひょっとして逆ギレ?


話に乗ったら下僕宣言されているのに、断ったら保身に走るだの、愛がないだのと、何故に俺が責められる。
その上、今、コイツなんて云いました? 保身に走ったと非難されるよりも何故かムカツクんですが……

「誰が、不能だッ! このエセ関西人ッ!! 左近の大筒は昨日も冴え渡っておりますからご安心をッ!!」
「えぇッ!? そんなん勢いで何を暴露すんじゃッ! エロおやじッ!!? つか、そんなん聞いて誰が安心するか、ボケェ!! あんたの大筒冴えまくると、あのほっそい佐吉が壊れてまうやんかッ!! ちったぁ、慎め、この中年ッ!!!」
「アンタ、また左近のこと中年って云いましたねッ!?」
「じゃかぁしいわッ! 中年に向かって中年ちゅーて何が悪いねんッ!! 中年がイヤやったら、俺らと同じくらいに若返ってみぃッ! 佐吉も紀之兄さんも俺も、無双ベースの乙女時間軸じゃ永遠の20代やでッ! おねね様かて見た目だけは、10代やッ!!」
「あぁ? 若けりゃ良いってもんじゃないでしょうがッ!? 体力ならアンタの十倍はありますよッ!! それに加えて年齢を重ねた知性とエロテクッ!! 別に大筒使わんでも殿はメロメロですよッ! 指テク・舌テクだけで、殿を昇天させるなんて、アンタにゃ無理でしょうけどねッ!!」
「何、自分のエロテク自慢しとるんじゃ、このセクハラ軍師ッ! ほんま、キモイわッ!!」
「アンタの方こそ、何、勝手に殿の写真なんかコレクションしているんですかッ! ストーカー? それともオタク? このサイトじゃサコミツがメインなんですよ。行長×三成も吉継×三成もメインじゃありませんからッ!!」
「ボケェッ! これはただの俺のオタクチック・コレクションちゃうわいッ! 佐吉の生写真は、小西裏商店の売れ筋ナンバー1。そのためのコレクションやッ!! そん中でも、幼少〜少年期の貴重な写真を、中年やけど佐吉のスィートやから仕方なく左近殿のために特別編集したっちゅうのにッ!! この恩知らずッ!!!」
「そんなん知るかッ!! 中年中年って、このゴウクツ商人がッ!! キリシタンはホモ厳禁でしょうがッ!!! 何、オタクチックって自分で殿オタクであることを認めてるんだァッ!!!」

お互い一歩も譲らずに怒声の限りを尽くす。
一気に喋り捲るものだからどちらも肩で大きくゼイゼイと荒く息を吐いている。白熱した舌戦だが、内容の吟味はこの際勘弁願いたい。
だが、不思議なことに、この舌戦に参加してもおかしくない人物が先程から一言も発していない。
小西殿も同じことを思ったらしく、その人物に向き直る。

「って、紀之兄さんも、この大筒エロ中年になんか云ったてやッ!!! ……………って、なんでそないに俺らから離れているんや、紀之兄さん?」
「弥九郎、島殿…………足元」

遠くから、ちょいちょいと俺と小西殿の足元を指さす大谷殿。

『え?』

その意味するところが理解出来ず、お互い顔を見合わせ疑問符をハモる俺と小西殿。
その瞬間――――

「朽ちるがいいッ!!」

足元で爆ぜる爆発音。それと同時に殿の激・無双乱舞が炸裂した。



2007/3/20


「団子奇譚 19」に続きます。




ご感想お待ちしております。命の糧です!(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。