まず、最初に対面して思ったこと。
……どこか、懐かしい感じを覚えるのは、気のせいだろうか。
身体に纏う衣はゆったりとしたもので、完全に体型を隠している。目の前の人物が男か女かも分からない。
顔を覆う面も、すっぽりと顔を完全に隠し、表情は勿論のこと、髪の色すらも分からない。
声は、全く聞いた事のない…低くくぐもった様な声。
なのに、何故…懐かしいと思ったのだろう。
その人物は、仮面に覆われて伺うことのできない顔をこちらに向けている…様な気がした。
その視線の意味を悟ることは、やはり表情が伺えないと…いくら獣牙の参謀である彼でも難しくて。
「…どうなされた?絶影殿」
黙ったままの聖龍族の参謀が気になり、彼…セツナは眼鏡の奥の赤い瞳を注意深く向け、そう尋ねる。
彼が停戦に向けての話をしている時も、聖龍族の隠密部隊の頭領―――絶影は、静かにそこに居た。
ただ、自分に向ける視線は…明らかに何かを探るように見ているのは、分かったけども。
「…いや、何でも。お気になさるな。少し考えることがあったのでな」
どこか篭ったような声が、少し笑うような調子でそう応えた。
「それよりも…停戦の話、お受けくださるか?獣牙の参謀…白面のセツナ殿」
「…仕方ありませんね。この戦乱の根本原因が明らかになった以上は…我が獣牙も他人事ではない」
セツナは肩を竦め、そして片手で眼鏡を押し上げて直す。
「獣牙王にお伝えしましょう。…直ちに獣牙の地に引き返し、中央に監視の目を向ける、と」
「感謝する。…それでは、飛天と鎧羅にも急ぎ連絡を飛ばさねば」
小さく頭を下げると、朧衆の頭領は右手の指を二本立て、面の奥にあると思われる口から、何かを紡ぐ。
その仕草に…彼は、やはりどこか―――懐かしい感じを覚えた。
赤い瞳は、真っ直ぐに聖龍の参謀を見つめる。
それが何なのか、はっきりと説明はできない。
けれど…
何となく、思った。確信できた。
自分が最初に感じた感覚―――懐かしいと思ったのは、今でも間違っていない…と。
まだちょっと続きます。聖龍と獣牙の参謀同士の話し合いの場で。
こっちはセツナ視点です。セツナのほうは、絶影がクオンであることを知らないのです。
どこか懐かしいと思いつつ、でもはっきりとは分からないので、ちょっと悶々としている感じ。
続きは、サイトにアップする際に完全版を書きます。
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『煌閃輝羽 -greaming feather-』 ……管理人:葉月ゆあ
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