誕生花その1


「猪里ちゃーん」

虎鉄が甘えた声を出して猪里の背中に覆いかぶさってきた。
正直ウザそうに猪里は身体をほんの僅か揺らしたが、殴るのも避けるのもウザいと判断した為されるがまま放置している。


「・・・何ね」

分厚い本に顔を向けたまま返事をする。
虎鉄は猪里のセーターに顔を摺り寄せてきた。
顔のアブラが付きそうだ、と一瞬考えて顔を歪ませたが、猫の様なその仕草に悔しいながらも少しばかり愛着を感じてしまう。


「暇だからかまっTe」

「イヤだ」

即答。

「冷たいNa猪里ちゃん」

「カイロなら向こうの戸棚にあるばい」

「さっきから何読んでるんDa?」

「秘密」

「・・・ソレ、植物図鑑だよNa」

「秘密」

「どうして植物図鑑なんて読んでるんDa?」

「秘密」

「・・・・」

あまりにも一方通行な会話のキャッチボール。
そーれっ、とボールを投げても、一向に返って来ないので再度投げ、また再度投げ。
見向きもされないボールは無情にも相手の横を通り過ぎ、どっかに飛んで行ってしまう。
気付いたらこちら側のボールは一個もなくなっていて。
「すみませーん、一個ぐらいはちゃんと返してくれませんかー?」
・・・なんて言って素直に返してくれるような人物ではないことは虎鉄が一番分かっていたりもする。

仕方ないので黙って落ち込んでみた。






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