その言葉につられて、イザークはうっかりと玄関のドアを開けてしまいました。
開けた先にはねこねこ宅急便でバイトするディアッカの姿。
ここまでは普通の宅急便の受け取りに何の問題も無ければ、全国日常茶飯事どこにでもある宅急便の受け取りです。
「何だ貴様か」
「毎度あり〜。ねこねこ宅急便でーす」
「そんなこと分かってる。さっさと荷物を寄越せ」
大学三年生のイザーク。
母上からマンションを与えてもらい、優雅な一人暮らしを満喫中。
勉強もできるので、大学生活は順風満帆です。
一人息子の一人暮らしが不安なエザリアさんは、しょっちゅう米や味噌などの食糧を送ってくる…。
というのは建前で、本当はねこねこ宅急便でバイトするディアッカを通じて、イザークに悪い虫が付いていないか調査させているのです。
もちろんイザークは知りません。
ディアッカがこっそりとエザリアさんから、裏稼業のバイト代を貰っているなんて口が裂けても言えませんね。
怖い怖い。
触らぬ神に祟りなしとは正しくこの事です。
でもお年頃の親友に彼女が居ないのは、親友としても居た堪れません。
ディアッカはそう思っていました。
そう思っていました…。
「おい、荷物は?」
イザークは早くディアッカを追い払おうと、受け取るはずの荷物を探しました。
だが、いつもディアッカに抱えられているはずの見慣れたねこねこ宅急便の箱が見当たりません。
「貴様一体どういうつもりだぁ」
今のイザークさんは寝起きで機嫌が悪いのです。
ディアッカの胸倉を掴み、今にも殴りそうな勢いです。
ディアッカ、ピンチ!
「ま、まぁ落ち着いてよ。荷物ならあるよ〜」
ですが、流石は癇癪もちのクールビューティ、イザークの幼馴染ディアッカです。
ヘラヘラ笑って上手く交わしました。
ですが、イザークは益々イライラします。 ディアッカの周りを見回しても荷物らしい箱は見当たりません。
「貴様ぁ、俺をおちょくっているのか!?」
「ぐぇ、ぐ、ぐるじぃ(TωT|||)」
イザークはディアッカの首を絞めました。
ディアッカは苦しそうです。
「だ、だず…げ、でぇ〜」
ディアッカの目の前に天使が見え始めました。
そろそろ本気で止めてあげないとディアッカが危ないです。
ですが、睡眠を邪魔されたイザークは怒りのあまりそのことには気づいてません。
そんな二人の間を割って入るかのように、白い手がイザークの腕を掴みました。
「ん?」
ここはジュール家が所有するマンションの最上階。
イザーク以外に住んでいる人はもちろん居ません。
なのでこの腕が一体誰のものかと、イザークは首を傾げます。
そして細い綺麗な腕を伝っていくと、そこには女性の胸の谷間。
「なっ!???」
腕の細さからして、白い手の主は細身の人間だとお利口なイザークの頭が一瞬ではじき出します。
そしてスレンダーな体からは想像できない、大きめの胸。
イザークは驚きのあまり、ディアッカの首から手を離しました。
ディアッカは「ゲホゲホ」といいながらその場に倒れこみます。
今にも死にそうなのに、冷たいコンクリートの上で放置されてしまったディアッカを気にすることなく、イザークは豊満な胸の谷間から視線をゆっくりと上げていきます。
そこには大きな翡翠の瞳、濃紺の髪の毛をした小顔可愛い子が、ウサギの耳を付けています。
「え、な?」
かわい子ちゃんの全身を見渡すと、バニーガールの格好をしていることに気づきました。
頭の回転が速いと自慢のイザークですが、流石に思考回路が追いつきません。
目を白黒させていると、目の前のバニーちゃんが胸の谷間から一枚の紙を取り出しました。
イザークは震える手で受け取ります。
乱暴に四つ折りにされたそれを広げると、宅急便の伝票。
宛て先はイザークの住所。
差出人はディアッカ。
品名は…。
「…アスラン・ザラ?」
イザークはバニーちゃんと伝票を交互に見ました。
「そうこの子がお届け物(*´∀`)ノ」
ようやく復活したディアッカがバニーちゃんの肩を掴んで、イザークに差し出しました。
益々イザークの頭は混乱します。
「はぁ?」
「この子の名前はアスラン。俺の親戚の子なんだけど」
「はぁ?」
「訳あってこの子預かることになったんだけどさぁー、俺この通りバイトで忙しくて」
「だからって何で俺が。子供じゃないんだ一人でも…」
イザークはちらりとバニーちゃんを見ました。
本当に捨てられた子ウサギのような目をしています。
その視線にイザークは戸惑いましたが、見てみないフリをしました。
「ひ、一人でも家に居られるだろ。何で俺が」
「まぁまぁ。俺からの早い誕生日プレゼントだと思って」
「俺の誕生日まであと4ヶ月もあるぞ」
「ほら、アスラン。お前もお願いしますって言うんだ」
ディアッカにそう言われ、可愛いバニーちゃんアスランはぺこりと頭を下げました。
「ヨロシクオネガイシマス」
イザークのお家にバニーちゃんが突然やってきました。
しかも可愛い子ちゃんです。
イザークの理性の戦いが今から始まろうとしています。
→バニーちゃんと戦う?
→バニーちゃんを返す?