夕方、殿と喧嘩をした 理由はほんの些細な事 あの時は私も苛立っていて 大人気ない事をしたと後悔している 「はぁ……」 何となく歩を進めると城下町に来ていた 日は落ちつつあるというのに、やはりここは賑やかで活気が溢れている けれど、一人でここにいるのは少し寂しい 「殿が小さい頃はよく来たものだ…」 あの頃は可愛らしかったと思い出し笑いをしていると 誰かにポンポンと肩を叩かれた 誰だろうと思い振返ると… 「殿…」 「No,ここでは藤だぜ?椿」 藤と椿 それは互いで決めた外での呼び名 ふと殿の着流しに目を向けると そこには木の葉がついていた 「藤…まさか貴方、獣道を通られましたな?」 「お前には何でもお見通しか。 …さっきは、悪かったな」 城から城下町まで行くのには隠しの近道がある それが獣道 きっと私を探しに急いでそこを通ってきて下さったに違いない なんて愛しい方だ… 「…私こそすみませんでした。」 「It's OK.んじゃあ、仲直りの記念に夜桜でも見に行くか、椿?」 「はい、藤の仰せのままに」 |
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