「十代くん、これあげる」


そう言って遊戯さんから手渡されたのは、いかにも女の子が好きそうな、可愛らしいピンク色の包装紙で包まれたものだった。
今日は、俺の誕生日じゃない。
俺が遊戯さんに何かをしたからお礼に、ってわけでもない。
じゃあ何で、といったらもう答えはひとつしかない。
だって今日は、

「遊戯さんっ…これ、本命って思ってもいいですか?」

そう、年に一度のバレンタインデーだったんだ。




俺の言葉に、遊戯さんの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

(照れる遊戯さんも可愛い)

つい顔がにやけてしまうのは、チョコを貰えた嬉しさと、恥ずかしがる彼の姿を見れた嬉しさの両方から来ている。
一方的な片思いだとばかり思っていたけど、遊戯さんが俺のことを好きになってくれたのなら、これ程嬉しい事はない。
遊戯さんは俺の憧れの人で、それ以上に大切な人だ。大好きな人だ。
そんな人が今、俺と同じ気持ちを共有しているなんて!

「…何笑ってるの、十代くん」
「だって、遊戯さんが可愛いから」
「っ!!十代くん!!」

つい口を滑らせると、遊戯さんは耳まで真赤にしてから怒り出した。
けれど全然迫力なんてない。照れてるのが丸分かりだ。
俺が笑ったままなのが不満なのか、遊戯さんは不機嫌そうに背を背けようとする。
けれどその前に、俺は遊戯さんを勢いよく抱き締めてそれを阻止した。

「わっ…」
「逃げないで下さい、遊戯さん。まだ答えも聞いてません!」
「え、あ、それは…」
「それは?」

俺の腕の中にいる遊戯さんは身じろぎひとつせず、石のように固まっている。相変わらず耳まで赤い。
じっと見つめても、視線を感じているであろう遊戯さんは顔を上げてくれない。
何も言ってくれない事に少々落ち込みつつも、好きな人を抱き締められた事に喜びを噛み締めてたりもする。
俺って、結構単純なのかもしれない。

(まあいっか、もうちょっとだけ)

彼が答えを出してくれるまで、もう少しこのままで。
大好きな人の温もりを感じながら待つのも、悪くない。



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十代→→表遊戯もえ。
一方通行に見えるけどしっかり両思いって萌えますよね!
十代くんは相棒にときめきっぱなしだといい。



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