■34話妄想■





「ナッツがクレープの背中を押したんだって?」

お風呂上りの水分の補給に、冷蔵庫からペットボトルを取り出すナッツにココが背後から声を掛ける。ナッツは一瞬動きを止めるが、ペットボトルの蓋を外し、ごくりと一口飲み干してから「ああ」と短く答える。
「クレープの真っ直ぐな気持ちが伝わったよ」
「それで?」
「え?」
「なにが言いたい?」
眉をひそめ額に皺がよる、怒ったような怪訝な顔。
「…別になにか言いたいわけじゃないんだ。ごめん、ちょっと、ね」
ココの視線が床へ落ちる。
その沈んだ表情を明るくさせる方法を知らないナッツは、ココの頭をくしゃくしゃと撫でる。
「お前らしくないな」
ココの視線が少し上がる。
「すまない」
そのまま、ココは目を閉じると視線がどこにあるのか分からなくなってしまった。







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