もしも風邪をひいたら:元・晶編

「うう…。風邪なんてずっとひいてなかったのに、なんで今さら」
「暴れるでない。粥がこぼれるじゃろう」

氷嚢を乗せ続けても熱は一向に収まる気配を見せない。元は甲斐甲斐しく俺の側についてくれて、木のスプーンで掬った粥をもう一口、俺に運ぶ。

「食欲が出ない。うまいんだけど」
「そう言って今日はほとんど食っておらぬではないか。空になるまで寝かせぬぞ」
「勘弁してくれよ…」
「ヌシを思って言っておるのじゃ。苦しみ続けるのは嫌じゃろう?」

湿った額を撫でられ、そりゃそうだけど、とぼそりと返す。少しくらい苦しくったって、そんなものはもう慣れているのに。

「…それに、話し相手がこれでは、満足に迷惑もかけられぬ」
「それは普段から慎め」
「ぬぐ。案外元気ではないか」

見つめ合ってひとしきり笑ったあと、氷嚢を除けて元が額を合わせてくる。

「ワシに願えば、こんな風邪など…」
「―たまには甘えさせてくれよ。夜以外でも」

しょうがないのう、とわしわしと頭を撫でられた。食事を終えたら、少し長い昼寝をしよう。


今回は三本立てです。ワンパターンだけど数で勝負!←
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