「別にさぁ、目の前で超能力を見せろ!とか、言ってるわけじゃないんだしさぁ……」

 透明なグラスに琥珀色の液体をなみなみと注ぎながら、涼宮ハルヒはそう言った。

「ただね、こう……気の利いた言葉とか、そう言うのないの、って……思わない?」
「あー……わかります、わかります」

 同じく透明なグラスに白濁した液体をなみなみと注ぎながら、朝比奈みくるはそう返していた。

「お金じゃないんだ!って、言いたくなりません?」
「そうそう、そうなのよ!奢るとか奢らないとかじゃなくて……」
「……気遣いの問題」

 気付けば私も、透明なグラスに翡翠色の液体をなみなみと注ぎながら会話に入っている。

「長門さん……長門さんも、わかりますか?」
「わかる。彼らは時に、自分がお金を出すことが自分の価値に繋がると考えている節がある」
「言い得て妙ね、有希。あいつら黙ってこそこそ財布出して、もう会計は終わってるよ、なんてのが格好言いと思ってるのよ。なに、私たちはたかりなわけ?」
「お金ほしさにつきあってる訳じゃない」
「よくよく考えると、お金でどうにかなる、って思われてるみたいで、ちょっとショックですよね……」

 アルコールの鼻につく臭いがあたりにまんべんなく漂っているが、彼女たちは気にした様子もない。
 ぱかぱかとボトルを次々にあけ、異常なペースで飲んでいる私たちは、周りからどう見られているのだろうか。

「映画行ってー、なんか食べてー、たまになんかくれてー……なによ、もっと大事なことあるでしょ!記念日とか!」
「最近デートとかの時しか、『好き』って言ってくれてない気がします……」
「……倦怠期?」

 三人寄れば姦しい、とも言うが、出てくるのは見事に愚痴、愚痴、愚痴。
 ふてくされて不平不満を垂れ流す私たちの姿は、おそらく相当に見苦しい。
 が。

「あー、もうっ!なんでこんなことで、このあたしが悩まなきゃいけないのよーっ!!」
「のみますっ!今日はもう、とことん飲みます!」
「……付き合う。行くとこまで行く」


 べろんべろんに酔っぱらってなお、私たちの飲み会はまだまだ終わらないようだった。





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