日常からかけ離れた「日常」 その2
ゼノア 「あらあら。拍手もらっちゃったのね。だったら、今夜は特別なご馳走を作ってお祝いしないと。ねえ、マリアン。さ、いい子だから、言うこと聞いてくれるでしょ?今晩のおかずのメインディッシュは、もちろんマリアン、あなたよ。…え?あら、全然痛くないのよ。心配しなくても大丈夫。ほらほら、そんなところに隠れたってダメよ。出てらっしゃい…」
ウィナ 「あの…ゼノアさん?」
ゼノア 「あら、ウィナちゃんじゃないの。台所まで、どうしたの?ひょっとして、もうお腹がすいちゃったのかしら?若いうちはどんどん食べて大きくならないとねえ」
ウィナ 「いえ…そういうことじゃないんです。台所から話し声が聞こえてきたので…ちょっと、気になっただけなんです」
ゼノア 「そうなの…でも困ったわね。マリアンが、どうしても今晩のおかずになりたくないって、駄々こねちゃって…今大変なの」
ウィナ 「マリアンさん…ですか?」
ゼノア 「ウィナちゃんは、マリアンに会うの、初めてだったかしら?」
ウィナ 「あ…はい」
ゼノア 「ほら、マリアン。こっちに来てご挨拶なさい。さ」
ウィナ 「…あ、あ、あ、あの…ゼノアさん…これって?」
ゼノア 「マリアンよ。仲良くしてあげてね。今晩にはおかずになっているけど」
ウィナ 「あ、はい…あ、いえ、えーと…あの、もう私…あんまりお邪魔しちゃ悪いので…」
ゼノア 「あらあら、優しい子ね。晩ご飯を楽しみにしていてね」
ウィナ 「は、はい…(ど、どうしよう…マリアンさんが晩ご飯にされちゃう…)」
ヨシュア 「…なんだ、お前、顔真っ青じゃねーか」
ウィナ 「きゃあっ!」
ヨシュア 「なっ、なんだよ。いきなり大声出したら、驚くだろーが」
ウィナ 「あ、ああっ、ごめんなさい、ヨシュアさん。ちょっと…考え事していたんです」
ヨシュア 「…まあ、いいけど。ただ、考え事してても、前だけは確認して歩いた方がいいと思うぜ?」
ウィナ 「え?」
ヨシュア 「お前が、廊下の壁と仲良くなりたいってんなら、別に止めねーけど」
ウィナ 「あ…はい。ごめんなさい。…あの、ヨシュアさん」
ヨシュア 「あ?」
ウィナ 「マリアンさんが…晩ご飯にされちゃうって、ゼノアさんから聞いたんです。私…どうしたらいいのか、全然わかんなくて…どうしましょう」
ヨシュア 「……マリアンって、誰だ?」
ウィナ 「さっき、ゼノアさんが台所でお話していました。一生懸命説得していたみたいですけど…」
ヨシュア 「だから、マリアンって誰だって聞いてんだろーが!」
ウィナ 「あの…ごめんなさい!私もよく、わからなくて…その…見た感じは、大きいカボチャさんでした…」
ヨシュア 「あー…ほっとけほっとけ。いつものことだろ」
ウィナ 「でもっ、このままじゃ、マリアンさんが晩ご飯のおかずに…っ」
ヨシュア 「ただのカボチャだろ?」
ウィナ 「そ、それはそうなんですが…でもおかずにされちゃったら、私…どうやって供養してあげたら…っ」
ヨシュア 「だから、ただのカボチャのことで…泣くほどのことかよ」
アンジェラ 「ウィナを泣かしてんのは、どこのどいつだーっ!!」
ヨシュア 「痛ェっ!てめ、アンジェラ、何しやがる!」
アンジェラ 「そっちこそ、ウィナに何しやがる!」
ヨシュア 「知らねーよ!こいつが勝手に泣き出したんだろうが!」
アンジェラ 「じゃあ、ヨシュア、お前も勝手に泣けばいい」
ヨシュア 「あ?わけわかんねーこと言っ…ああーーっ!!」
アンジェラ 「ああ、ごめん。さっき庭で雑草刈ってたからさ。手が汚れてた」
ヨシュア 「水ーっ!うわあああーん!アンジェラが僕の水、汚したーっ!!」
ウィナ 「アンジェラ…」
アンジェラ 「悪者は僕がやっつけてあげたよ。で、ウィナ、どうしたんだい?」
ウィナ 「マリアンさんが…晩ご飯のおかずにされちゃうの…どうしよう、アンジェラ…」
アンジェラ 「……マリアンって、誰?」
ウィナ 「カボチャさん…」
アンジェラ 「は………?」
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