15万アカウントおめでとう企画 No.17 バルフレア夢 (1ページ目)





「いえ、あの・・・ひ、一人の人として・・・す、好きです」
この言葉。俺に向けられたものだったら良かった。
そうじゃないと分かった時に、無性に腹が立った。
真剣なものなら諦めもしよう。
だが、そうじゃなかったら、俺のこの気持ちはどこへぶつければいい?



ビュエルバの宿の一室。
追われている身として、共有スペースである談話室を使うわけにはいかないため、俺たち一行は男部屋で今後のルートを決めたり、話し合ったりする。
いつまでも緊張した話をするのも疲れるのでカードを使って遊ぶこともよくある。

そしてただのカード遊びでは面白くないと、なにやら賭けをすることもしばしば。

もちろん、金銭が絡むとややこしくなるので、勝った者が負けた者に何か指示をする。というのが最近の俺たちの流行だった。

勝者の指示は、その者によって内容は様々だが、時にはロクでもないことを言い出すヤツもいる。

―――今回はヴァンがそうだった。

「いやった!勝ったー!!」
「・・・え?・・・うそ、私・・・負けた?」

今までのゲームでヴァンが勝ったのは初めてではないだろうか。
勝敗が決まった途端、ヴァンはカードを机に広げ、バンザイして飛び跳ねた。
対するアイツはというと・・・、あまりにも急な結果に唖然としてヴァンを見ている。
公平を期すため審判をしていたパンネロは「よかったねヴァン」と祝している。
フランとアーシェは離れた場所で傷んだ道具のチェックをしていた。

俺はというと、ヴァン達から少し離れたベッドに腰掛け新聞を片手に琥珀色の酒をバッシュと共に交わしていた。

「よーし、俺が勝ったんだからな!絶対正直に答えてもらうぜッ」
ニヤニヤした顔で意気揚々と喋るヴァンの姿にアイツの顔は引きつっている。
何を指示されるのか想像もつかないんだろう。

一体何のきっかけでゲームがスタートしたのか興味はなかったが、勝敗を期したこの様子はなかなか面白そうだ。
そう思い、新聞から顔を上げ、2人の様子を見てみることにした。


「ヴァン。負けたから答えるのはいいけど、貴方に真実を告げればいいだけでしょ」
「何言ってんだよ。本人に言わなきゃ意味ねーじゃん」
「そっ、それはッ!!」
ガタッと椅子を派手に鳴らして勢いよく立ち上がりヴァンに詰め寄るその顔は、真っ赤になっていた。



なにごとだ?



「この旅って結構辛気臭くてさ、楽しみのカケラもねーじゃん。俺としてはさ、もーちょいウキウキワクワクする旅にしたいんだって」
「そっ・・・それとこれとは、関係ないんじゃないのっ?」
真っ赤にしながら必死に詰め寄る姿を見てもヴァンは平然とし、逆にチッチッチッと指を振った。
「何がキッカケでさー、どうなるか分からないじゃん。旅を盛り上げる一つの余興と思ってさ!」

かぁぁぁぁっ!
アイツの顔の赤は耳まで達した。
口はへの字に結び、眉をグッと寄せて何かに耐える表情だ。

もうこの時点でこの部屋にいる全員は何事かと見つめている。
その視線にも気づいたため、余計顔を真っ赤にしたんだろう。

「わ、分かったわよ!言うわよ!でも可笑しなことになったらヴァンが責任とって収拾付けてよねっ!!」
そう捨て台詞を吐いたかと思うと、くるっと踵を返してこちらへと近づいてきた。

耳まで真っ赤にして顔を俯かせて、視線はあちこちグルグル回っている。


その姿を見て自然と俺の口の端が上がった。
「告白する気だな」と。

ここまでの流れを見れば当然、予測は付くだろう。
オマケに分かりやすい態度で、だ。

おおかたヴァンに「好きなヤツに正直に告白してこい」という指示でも言われたんだろう。

そう思案すると同時に「やっとか」という安堵感も生まれる。
俺はアンタが好きだ。
これまでそれなりにアプローチはしてきたが、あえて俺から告白はしなかった。

どうせ天然思考だから言っても、はぐらかされるに決まってる。
だから自分から俺が好きだと気づくまで告白はしなかった。

それが今、顔を真っ赤にしてこっちに近づいて来れば、大体何しにくるのか分かるだろう。

やれやれ、ようやくか。
心の中でようやく溜息をついて、ニヤついた表情を隠すように琥珀色の酒に口を付けた。



だが、あと数歩で俺の前に来るというところでいきなり進路を変えた。

なんだ?

そう思った俺の視線の先は・・・隣のベッドに腰掛けるバッシュの元へ行き着いた。

バッシュも同じくベッドに腰掛けていて、俺とは向かい合う形で座っていた。
互いのベッドの間にあるサイドテーブルに2つのグラスと1つの酒瓶を置いて、今の今まで純粋に酒の味を互いに楽しんでいたはずだが・・・

アイツはバッシュのそばに行き足を止めた。


なんだ、これは?



未だ耳まで真っ赤にした顔を俯かせ、服の裾を頼りなげに掴みながら口にした名前が、俺の名前じゃなく―――
「あの・・・ば、バッシュ、さん・・・」



待て。相手が違うだろ!



「じ、実は・・・バッシュさんのこと・・・」



バッシュも驚いているだろ。違うだろう。お前が告白するのはソイツじゃないだろ!



「・・・すっ好き・・・です」





(続きます)








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