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『ただそれだけで Side-BA』



「フィガロ王国、万歳!!」

「エドガー陛下、万歳!!」

「――万歳!!」

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 見上げれば、当たり前だけれど、隣に在った頃と変わらない。
 ただ少し表情が変わった、気がする。
 遠目に見ていると、嫉妬する余地すらない才能を示し続けてきた後ろ姿を、思い出した。


『――お前は、甘んじて受け入れるというのか?』


 向かい合うべき相手が違ったんだよ、叔父上。
 その願いを伝えていれば、ほら、掛ける言葉を少し変えて。
 変わってしまった日々を、変わらない想いで、語り明かし――
 互いに杯を交わす時間が、ほら、帰ってくる。

 零れ落ちたものは、数知れず。
 けれどそれよりもたくさんのものを、拾い集めていくんだ。
 変わろうともがき続ける、その限り。

 雨が降り始めた時、自然とフードを被るのを見かけた。
 ……大げさかな? でも――

 雨が珍しくない世界を知った。けれど国への想いは、変わらない。
 それだけ、なんだけどな。
 強くなるには、支えられるようになるには、まだまだ足りない事だらけな中、
 こんな小さな出来事が、零れ落ちた部分を埋めていく。



 ――ただそれだけで、うれしいんだ。



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