Do you mind if I share a table?
大学のカフェテリアの入り口で、マツウラはずっと二の足を踏んでいた。なかなか中に入れない。
混んでいるわけではない。むしろ、この時間は利用者が少ないから空いている。
苦手な人が中に居るわけでもない。
大体、彼には今どうしてもカフェを利用しなくてはいけない理由もない。
だから、もし混雑や人間関係のトラブルが原因でためらっているなら、踵を返して良いはずなのだ。
でも、彼はそうしない。
20分ほどはそうしていたろうか──カフェに出入りする数少ない学生たちから怪訝そうな一瞥を投げかけられながらうろつき続けたマツウラは、ようやく覚悟を決めて中へ踏み込んだ。
券売機で買ったコーヒーの券を握り締めたまま、彼は空いた席の一つへ近づいた。
そして、空席の向かいに座る人物に、絞り出したような声音で相席を乞うた。
がらんと空いたカフェ内。
まっすぐその席へ向かってきた彼を見上げて、ノートをまとめる手を止めたアキラは、優しく微笑んだ。
I-gnisより:マツウラとアキラ
タイトル:Overture様より、「相席いいですか?」
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