-12話派生話(ロロとシャーリーとルルーシュ)-




流血表現あります。大丈夫な方はどうぞ































血が、赤い赤い血が、ロロの足元に広がっていた。


『行かなきゃ、いけないの。ルルに会わなきゃ、いけないの』


焦点の合わない目で、虚ろな声で兄の学友はロロに言った。


『ルルに聞かなきゃ、いけないの』


聞いてもいないのに彼女はロロの目の前に立っている理由を語る。 手には似合わない拳銃を握って、目にはルルーシュだけを映して。


『お父さおとうさんお父さんお父さんおとうさんお父さん』


うわごとに呟くその名はロロにはまったく覚えのないものだった。 目にはルルーシュだけを映しながら、口はまったく違う名前を呼ぶ。 それは少しずつロロを苛立たせた。


『殺したころた殺した殺したころした殺たころした』


まったく手に馴染んでいない拳銃。 もはや恋の残骸となった少女にロロは無慈悲に銃口を向ける。


『殺すの?ころすの殺すのころすの殺すのころすのころすの』


シャーリーは哄笑する。 けたけたと気狂いした笑い声を上げる。


『殺すのころすのこロスの殺すの!偽者の弟の癖に!!』


シャーリーの弾丸はロロの頬を掠めた。 ふらふらとしながら、シャーリーは確かにロロに向けて引き金を引いていた。 正気をなくしているくせにシャーリーはロロのことを認識していた。 それも正しく。


ロロは反射で引き金を引いていた。 その弾はシャーリーと違ってしっかりと狙った場所を撃ち抜き、シャーリーは赤い軌跡を引きながら吹き飛んだ。 ロロが狙っていた眉間には拳銃に込められていた銃弾がすべて撃ち込まれる。


『うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!兄さんにたかるハエが!何が兄さんを殺しに来ただ。兄さんに触らせるか!死ねしねしね死ねしね!!!』


銃弾を撃ちつくしてもロロは引き金を引き続ける。 銃弾がなくなったことに気づくと、ロロは事切れた少女の顔を拳銃のグリップで殴り続ける。


目も鼻も口も頬もすべて潰すために血でグリップが滑っても、血が顔に飛び散っても、ロロは原型が崩れるまで殴ることをやめなかった。鈍い音がいつまでもいつまでも響いた。










「何もかも持っている癖に」


ロロは足元には赤い赤い血が広がっていた。


「僕も兄さんのために殺したよ。こんな女と違って、最後までちゃんと殺したよ」


ロロは夢見がちに、ハンカチで血を拭いながら笑う。とても満足げに、笑った。


「ルルーシュには知らせるのですか」


一部始終を見ていたヴィレッタは静かに問うた。


「お前はこれを片付けておけ。兄さんには報告無用だ。僕は兄さんにたかるハエを駆除しただけだ。こんな女の話で兄さんを煩わせるわけにはいかない」


ロロは先ほどまでの執拗さが嘘のようにしっかりとした言葉でヴィレッタに命じる。 ヴィレッタはその落差に一歩後ずさりそうになるのを頭を垂れることで誤魔化す。


「……、イエス・マイ・ロード」


ヴィレッタは声の振るえを抑えるだけで精一杯だった。


(どこまで狡猾で、どこまで狂っているんだ)


ヴィレッタはかつて生徒だった少女の無残な死体を見下ろしながら思った。


(もうこれの手綱は握れないぞ、ルルーシュ)
 
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