愛されているのか

愛されていないのか


不安になるのは、俺だけなのかな




・truth・ ※環鏡環





「鏡夜、きょーや!」

「…何だ?騒がしい。」

「いいだろう!ハルヒが俺に庶民菓子をくれたんだ…!」

どうだ、と。
済ました顔で愛読書を読む恋人に、菓子袋を見せ付けてやる

「そうか、それは良かったじゃないか。」


ほら.
いつだってお前は冷静で
こうやって、ハルヒの話題を口に出しても、
接客中姫達にとろけるような甘い、甘い、言葉を囁いたとしても
顔色のひとつも崩しやしないんだ。



ほんの少しだけ、ヤキモチを妬いてほしいだけなのに

ほんの些細なことでも、お前の気持ちを確認したいだけなのに

何度勝負を仕掛けてみても、結果なんて目に見えていて。


いつだって、不安になるのは俺ばかり




「あぁ、あとさっきハルヒがー…」

「環。」

「…何?」

「分かっているから、もう止めろ」

「俺に、ヤキモチを妬いてほしいんだろう?」


図星をつかれ、思わず言葉につまる。

意図を分かっている上でのこの態度。
本当に俺は、思われているのだろうか。
この想いは、俺の一方通行なんじゃないか。

そう思うと、なんだか切なくて

椅子の上に体育座りをしながら フイ、と顔をそらす


「…別にそんなわけじゃないもーん」

「…そうか、どうやら俺の勘違いだったようだな」


興味も削がれた、というように再び活字へと向けられる目線に、

チク、と胸が軋んだ気がした


「……。」


寂しくて、寂しくて、

気づいて、と言うように何度も視線を送る


「…何だ?」

「何でもなーい」

「…そうか。」


あっさりと切られてしまう会話

終わりの見えないやり取りに、ため息が漏れる


「…鏡夜、お前さ…俺のこと本当に愛してる?」

真剣に問うてみたにも拘らず、未だ鏡夜の視線は活字に捕らわれたままで

頬を膨らませ、不機嫌を前面に睨み付けると、
不意に綻ぶ、整った口元。

笑われたのは自分だろうが、
それだけのことで、こんなにも自分の表情は輝いてしまう


「…今、お前笑っただろう?」

「いや、あまりにもお前の姿が滑稽でな」

「お前が俺のことを愛してくれないからじゃないか。」

「いつ、愛していないなどと言った」

「だっておまえ、全然ヤキモチとか妬いてくれないし」

「そんなわけじゃない、と言ったのは、どこのどいつだ?」

「あんなの嘘に決まってる」

「都合のいい言葉だな」

「そんなことより、」

ガタン、と音を立てて腰を上げ、
机越しにいる相手を、そのままギュッと抱きしめる

「この想いは、俺の一方通行なのか?」

らしくないほどに、弱弱しい音色
情けないな、と自分でも思う。

「…環。」

「…なに」

「どうして俺がヤキモチを妬かないか、…知っているか?」

「…知ってたら、こんな気持ちになったりしない」

「…そうか」

ふ、と離れる温もりに、虚無感を覚える。
しかし次の瞬間
唇に触れる、柔らかな感触

突然の事に思考がついていかない

「な、…ッ」

「お前が想っているのは俺だけだ、と、確信を得ているからだよ」

「…、…え…?」

「だから、不安になることもない」

「お前は必ず、俺の元へと戻ってくるだろう?」

「だから環。お前ももっと自信を持て」


―俺が愛しているのは、お前だけだ



恋人の口から告げられた夢のような台詞

あまりにらしくない台詞に
ポカンと口を開いたまま唖然と固まってしまった

まさか、こんな愛の台詞が聞けるとは


嬉しさに、顔の筋肉が緩んでしまう


「きょーや…!!」



こうなってしまえば、自分の気持ちを抑えることなんて出来なくて
愛しい恋人を、もう一度、力いっぱい抱きしめる



何度もキスを送りながら、
愛してる、と



「本当、現金な奴だな、お前は」


そう、小さく呟く君の表情は、きっと優しく彩られているんだろう。
眼鏡で隠され、確認は出来ないけれど





愛されているのか、いないのか

そんなことで悩んでいた自分が滑稽に思える。




大事なのは、


君を愛していると言う、

この、事実






・END・



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拍手有難う御座いました★

初の環鏡なんですが、…ど、どうなのでしょうか…汗
二人の口調が分からなくて、皆さんの反応が心配なのですが;;
環鏡のつもりで書いていたのですが、環があまりにも受け臭くなってしまったので、あえて環鏡環で(笑)


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