Thank you!



「このままじゃ余りものになっちゃう!」


何人目か最早数えることもやめてしまった、友人からの結婚の報告を受けて、自分にはちっともそんな兆しが無いことを嘆いて大学からの友人である及川くんに愚痴をぶつける。今回は私と及川くんの共通の友人が結婚するということもあって、及川くんがうんうんといつも以上に頷きながら話を聞いてくれるのをいいことに、居酒屋でお酒を飲みながらくだを巻く。


「彼氏がいなかったわけじゃないのにさあ~、全然結婚までいかないし」
「うんうん」
「帰省するたびに親には『いつ結婚するの』なんて聞かれて、嫌になっちゃうよね!」
「あ~それ俺も言われる」


及川くんも?なんてへらへら笑いながら、ぬるくなって泡も殆ど消えてしまったビールをのどに流し込む。
女の子なんだから可愛くカクテルとかにしなよ、なんて有難いアドバイスを頂いたこともあるけれど、いわゆる女の子が呑むような可愛いカクテルは甘いばっかりでお酒を飲んだ気にならないから嫌いだ。女の子がビール飲んで何が悪い。


「俺はビール飲める女の子ってかっこよくて良いとおもうけどねえ」
「え、ありがとう!及川くんってもっと女の子っぽい子が好みかと思ってた~」
「それ、いつも違うって言ってるじゃん」
「あれ、そうだっけ」


アルコールでふやけた脳みそを回転させても、そんな記憶は思い当たらなくて、無意味だったみたいだ。それでもジョッキを口に運ぶ手は止まらない。


「ああ~早く結婚したい。私も早く結婚したい」
「する?」
「はい?」
「俺と結婚する?」
「・・・・・・え、いや、何いきなり」
「俺も結婚したいし、てかずっと好きだったし」
「は!?それ初耳!!」
「だって黙ってたし。でも、そろそろいい加減欲しくなっちゃった」
「いや、そんな、っ」


脳みそが追いつかない。
次の言葉が継げずにしどろもどろになっていたら、おしぼりの入っていた袋をくるりと丸めて輪っかを作った及川くんが、それを私の左手の薬指に通す。


「今度、こんな偽物じゃなくて本物の指輪買いに行こうね」


それからかすめるようにして口付けを落とされた。ずるい、こんな強引にいきなり、私の心を奪っていくなんて。
ねえ、その言葉のとおり、きちんと責任とってもらわなくちゃ、私及川くん無しじゃ生きていけなくなっちゃうよ。




#ハイキュープラス
#言葉リストからリクエストされた番号の言葉を使って小説を書く
23.偽物/口付け/余りもの




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