あのひとが好きだ。
窓から見える、靴箱に向かう生徒達の中。対照的な色をした二人を見つけて、呟いた。



「お前背ェ縮んでね?」
「嫌味か。お前が伸びたんだろ」

聞き慣れたふたつの声。階段をのぼってくる足音に混ざって、耳に届く。
ガラス越しの朝日は眩しすぎて。チカチカする目を一度閉じ、ふたりの様子を頭に浮かべた。身長はそんなに変わらない。

「スカル?」

呼ぶ声に反応。けれど振り向かず。だって隣りには、居るじゃないか。もうひとり。
それでももう一度呼ばれたら、糸が切れてしまった。綺麗な音に誘われる。俺の意志って凄く弱い。自覚があるだけマシなほう。

「おはよう、ございます」

顔を向けた。視界が真っ黒だ。髪と目と、制服と。
お前耳悪くなったな?眠そうな顔で笑われる。本当は気付かれてた。一度目無視しただろ、って。そう言われた気がした。

「おい。行くぞコラ」

黒髪の後ろから金髪が覗く。今日も。綺麗だ。
人工じゃない色の髪と目に、あのひとがいつも向ける視線の先にある彼に。俺は憧れた。あんな風になってみたい。

「ああ」

対照的な色をした二人が背を向ける。二年の教室は、もうひとつ上の階。
階段何段分かに換算すると、ああ面倒臭い。それって遠い。今はこの足で行ける距離だ。けれど。

「あ、スカル」

あのひとがまたこっちを見た。いいの?先輩。置いてかれてる。
人差し指が一度俺をさして、上に向いて。

「昼飯、俺の教室」

それだけ。言って、また階段をのぼる。
何の暗号だろう。違う、いまの。心を読まれたのかと思った。昼になったら、また会えます?



好きですよ、凄い好きだ。だから俺も髪色薄くしたい。空みたいな色の目にしたい。背ェ伸ばしたい。声低くなりたい。願望だらけ。
だって凄い。一声であのひとを動かせるんだ。俺もああなったら。あんな風になれたら。

いつか、あのひとの隣りに。







*******

憧れの先は








ついでに一言あればどうぞっ

あと1000文字。