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■お礼SS(1/1)

*執事(主人公)×主人(陽介)的なモノです。



 「お呼びですか、陽介様」
 「えっと…その、様って言うの、やめねぇ?」
 俺たち、同い年だし。

 呼び出されたかと思えば、いきなりそんな言葉を告げられる。
 確かに執事である自分と、雇い主の息子である彼とは同い年と聞いていた。
 だが、仮にも雇われの身の立場で、そのような大それた行動を取れるわけがない。
 下手をすればクビだ。
 「ですが、」
 そう思い断りを申し出ようとしていた言葉の続きは、彼の浮かべる表情によって遮られた。

 「俺、堅苦しいの苦手なんだよ」
 呟いて目を伏せた彼の表情はとても儚くて、普段の彼からはとても想像が出来ないものだった。
 出会って最初の印象は、明るく、良く笑う、とても素直で幼さが残る青年。
 「……」
 そんな彼が、このような愁眉も出来るのか。
 視線を逸らすことが、出来ない。 

 「それにさ、この家とか血縁で、同い年のヤツとか、初めてだし…」
 嬉しいんだ。 

 そう言って少しの憂いを含んで微笑んだ顔が、とても綺麗で。
 あぁ、もっとその表情を見ていたい。
 素直な色に変化する、その瞳を見ていたい。
 そのためになら、どんな願いでも叶えてやりたい。
 「…承知、いたしました」
 気づいたら了承の意を告げていた。 


 「え、マジで…?やった!ありがとな!」
 まさか承諾してもらえるとは思っていなかったのだろう。
 そう言って向けられたのは、向日葵の花のような、太陽のような笑顔だった。

 前言撤回。
 この、笑顔が見ていたい。
 自分の手で、この笑顔を引き出してやりたい。

 「あと、二人の時は敬語もナシ、な」
 ウインクと共に返される言葉。
 「…わかったよ、陽介」
 あぁ、この想いは主人に対して向けるには不適切なものなのだろう。
 だが…
 「へへ…これからヨロシクな!」
 この笑顔の為になら、多少の規則違反も許されるだろう?


 こちらこそ宜しくお願い致します、俺の可愛いご主人様。
 貴方の為なら、何でも手に入れて見せましょう。
 貴方の為なら、どんな願いでも叶えて差し上げましょう。

 だから沢山、その笑顔を見せて欲しい。






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