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ダーリンは心配性

桜木が社会人3年生になって数ヶ月。
収入も安定したようで、遂に昨日から流川と同棲をスタートさせた。

引越しが終わり、二人きりの時間を満喫したいところだ。
だが今日は月曜日。ちゃんと仕事に行かねば、流川と共に家なき子になってしまう。
「なあ、本当に一人で大丈夫か?」
流川は大学は休講で休みだ。午後に練習にだけ行くらしい。
「ああ」
流川を一人にする事が心配でしょうがない桜木は、玄関先で流川の顔をじっと見つめた。
「本当か? ガスとか電気とか、戸締りとかちゃんと出来るか?」
「出来る」
「怪しい奴から電話が来ても相手すんなよ?」
「分かってる」
子供扱いでもしているのか、と聞きたくなるレベルだ。
だが桜木を安心させるため、流川はしばらく付き合ってやる事にした。
「新聞もいらねえから、勧誘が来たら断れよ」
「ああ」
「セールスも断れるか? 無理矢理買わされたりすんなよ」
「大丈夫だって言ってんだろ」
「練習の時間分かってるか、昼寝しすぎて遅れるなよ」
「分かってる」
「おっ、俺が電話して起こした方が――」
「桜木、いい加減にしろ」
流石にもう付き合いきれなくなった流川は桜木を制した。
「すっ、すまん! でも心配でよぉ……」
「大丈夫だ、何かあったら電話する」
「お、おう」
「早くしねえと遅刻するぞ」
「そっ、そ、そうだな! じゃあ行ってくる!」
桜木はバタバタと鞄を掴んでドアへと向かう。その姿に流川は首を傾げた。
(――あれ?)
そういえば、昨晩桜木は出かける前にどうしてもしてみたい事があると言っていた。だから自分も早起きしたのに、どうやら桜木本人はそれをすっかり忘れてしまっているらしい。
「桜木」
「ん?」
「大事なもん忘れてるぞ」
「なっ、何だ!」
チョイチョイと流川が手招きをし、そわそわと忙しない動きをしている桜木を呼び寄せた。
「携帯と財布と定期はあるぞ」
「そうじゃねえ」
「ん?」
流川は桜木のネクタイを引っ張ると、軽くキスをした。
「ルッ、ルル、ルカワッ!」
「昨日してえって言ってただろうが」
「あ…そういや、そうだったな……」
「忘れてんじゃねえ、どあほう」
乱れたネクタイを整えてやり、流川は桜木の胸を軽く叩いた。
「さっさと行ってこい」
「おう! 行ってきます!」
浮かれ調子の桜木を見送り、流川は溜息を一つ。

これから毎朝、行ってらっしゃいのキスをしなくてはいけないのだろうか。
朝が苦手な流川にとって、これは試練になりそうである。

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後日、行ってらっしゃいのキスは余裕で出来るようになる流川だった…。


次の拍手に新作載せました^^



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