02:)ポッキーゲーム

「じゃーん、買うてしまいましたロングポッキー」

休みの日、ユウジの家に遊びに行って早々『ポッキーゲームで盛り上がろう!』 と宣伝文句とそれに見合うイラストがとでかでか描いてある箱をユウジに向かって突き出してみせた。 それを見たユウジは呆れたように「アホか。無駄遣いすんな」 と吐き捨てるように言い玄関に私を置いて一人さっさとリビングへと歩いていった。

「ええ、ユウジこないだこれええなあとか言っとったやん」と言いながら靴を脱いで慌てて背中を追いかける。 リビングでは既にソファにだらしなく腰掛けたユウジがテレビを眺めていて、 私は『どうぞ』と言われるまでも無く彼の隣に腰を落ち着けた。

その時丁度CMに入ったテレビが映し出したのは今私が手に持っているロングポッキーのコマーシャルで、 これを入手する原因となったものである。
ついこないだも同じようにユウジ宅にお邪魔して二人でだらだらテレビを見ていたのだけれど、 その時『出ました、ポッキーゲームが更に楽しめるポッキーゲーム用ロングポッキー!』 みたいな宣伝を一緒に見て、ユウジは「これ、使えるなあ」と呟いたのだった。
ちなみにそれはとあるテレビ番組とのコラボレーション開発で発売されたもので、 今、カップルの愛を試してみましょうというのが流行っているのだ。


「ねえ、折角買ってきたんやから一回くらいやってや」
「はあ、ギャラリーもおらん、余興でも何も無しに二人だけでポッキーゲームてどないやねん」
「何やそれ変態っぽい。見られんとドキドキ出来へん人っぽいでユウジ」
「あんなあ…大体新発売や流行やって騒ぐんが女の悲しい性やな」
「自分やって興味示してたくせに」
「せやからコレはネタグッズやろ言うてんねん」
「ラブラブグッズでもあるやん」
「あーもうお前うっさいしめんどいわ」

後頭部をわざとらしく掻いたユウジは丸めきっていた背筋をぐっと伸ばして私の腕を引いた。
次の瞬間唇と唇がくっついて、私たちは互いに目を開いたままキスしてた。

「これで満足やろ」とさっさと離れていくユウジの温もりがちょこっとだけ唇と掴まれた腕に残る。


「……アホやなユウジ、ポッキーゲームはちゅうするしないのギリギリでドキドキを楽しむ遊びやんか」
「ああ?お前俺とキスしただけじゃドキドキせえへん言うんか」
「そういう事言うてるんちゃうわ、トキメキ方の問題やん」
「要するにお前は俺とロマンチックにラブラブイチャコラしたいだけなんやろ」

(そういう事のような、そうでないような、)

複雑な気持ちになりながら「図星やろ」と、どこか得意げな表情のユウジを見ていたら、 何だかどうでもいいような気分になった。

「うん、もうそれでええわ」
「ほなそのポッキーの数だけ見つめながらじわじわキスしたるわ」
「いや、それはええわ」
「何でやねん」


私はユウジから使用許可の下りなかったロングポッキーをおやつとして齧りながら、 「訳わからん」とため息をつくユウジから目を逸らした。

(だってそんなん、心臓もたんやん)



ポッキーゲームってお題見て一昔前にブームを巻き起こしたロングポッキーを思い出しました。
あったんですよ、そういうポッキーが!笑






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