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  ----- プラマイゼロ ---------------



「聞いてよ快斗! あのコソ泥さん、昼間に堂々と出たんだって!」

「……幽霊みたいに云ってんなよ」

 朝の教室、気怠い喧騒とは全く違うベクトルでいきなり間近に出現した幼なじみ。眠さを引きずる快斗はその元気に半ばあきれつつ相手を務める。

「幽霊の方がマシよ! 平然と空飛んでたなんて、非常識よねー」

「いや、常識求めるのが間違ってんじゃ」

「それもそっか」

 他に云いようのなかった快斗にあっけらかんと頷き、憤慨を追いやるために一呼吸、一考察。そして。

「同じ白くて飛ぶものでも、鳩とは全然違うわよねー」

 連想ゲームじみた発言に、快斗はある意味感心する。

 同じ人間が生み出している事象であることは、勿論告げられないけれど、それでもここまで話を振られてなにもしないわけにはいかないだろうと、奇術師の笑みを浮かべて。



「1、2、3、ゼロ!!」



 小さな煙と一緒に、幼なじみが好きな方の白を生み出した。

 羽ばたきに髪がふわりと舞い、肩にとまった銀鳩に歓声が上がる。ところがすぐに首を傾げ、

「ヘンなかけ声……いつもと違ったよね?」

 相変わらずの妙な察しの良さを発揮して、快斗に苦笑をもたらせた。

「まぁこれで帳消しってイミだし」

「なにが?」

 きょとんと訊く幼なじみを、別にの一言ではぐらかして、もう一度煙の花を咲かせる。

 今度舞うのは柔らかな白い花びら。

 そして青子にも咲く、笑顔の花。

「快斗すごーい!!」

 白のマジックへと向けられる屈託のない賞賛に、快斗こそ満足気に微笑んだ。



 同じ白へ向けられた、キラいと好き。

 これでプラスマイナスは、ゼロ。



--------------- END - 091126 ----- 


いちおう鎮魂歌ネタだったりします。



 


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