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おまけ小話13『陛下の考えごと』 >>『陛下 に贈るわがまま』




その日のお茶会は、やけに静かだった。
こういう場では――ピアニィに誘われて二人きりで過ごすときは――たいてい 微笑を絶やさないリィヤードが、珍しくぼんやりとしている。 はじめに二言三言しゃべったあとはずっと無言で、向かいに座るピアニィの顔を眺めつ つ、少しずつ香茶を口に運んでいる。
きっと疲れているのだろう。無理もない、昨夜もほぼ徹夜だったという。
そんな幼馴染に気を遣って、ピアニィも口を閉ざしていた。

それにしても。
(ずっと見ていて飽きないのかしら・・・)
リィヤードは何も言わず、ただひたすらピアニィを見ている。 凝視しているとは言わないまでも、目を逸らすそぶりすらみせない。
おそらく、意識したものではないのだろう。正面の席にいるのだ、 まっすぐに座っていれば自然と目に入ってくるのは当たり前だ。 それにきっと、頭の中では全然別のことを考えているか――もしくは、 何も考えていないに違いない。意識しているのはこちらだけだろう。
そうは思っても、落ち着かない気持ちはどうにもならない。 リィヤードの視線に、そろそろ耐えられなくなってきた、そのとき。

リィヤードが、ピアニィを見つめたまま、深々と溜息をついた。

これにはさすがにピアニィもむっとした。
彼が何を考えていたのかなんて分からない。 でも、人の顔を見て、溜息をつくなんて!
わずかな休憩時間を得て、やっと会えたのに。私はとてもあなたに会いたかったし、あ なたのことをとても心配しているのに!
一言言わなければ気がすまないと、ピアニィが抗議のために口を開きかけると――

先んじてリィヤードが言った。
「ああ、まったく」
ほう、ともう一度溜息をついたあと、のんびりと、しみじみと、何気ない口調でこう続 けた。



「本当に、君はなんて可愛いんだろうね、アニィ」



「・・・・・そんなこと考えてらしたんですか!?」
まったくもって予想外の科白に、ピアニィはびっくりして目を見開いた。

そんな相手の反応を見て、リィヤードもはっとしたように目を見開いた。

「・・・あ」

しまった。と思ったが、すでに後の祭りだ。
あまりにぼんやりしていたために、つい本音をもらしてしまったリィヤードだった。


(2009/04/09)


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