(犬夜叉/弥珊)


妙に肌寒い夜だ。そう感じた。最初は小屋に穴が空いているからだ、と思った。
その後、ごそごそと衣擦れの音がして、咄嗟に重い瞼を開く。
「あ」
「………っ!」
現状を悟るのに数秒はかかっただろう。弥勒の顔が目の前にあったのだから。

「…なっ…何をしてる何を!!」

あまりにも近くに顔があったものだから、平手打ちを食らわす訳にもいかず、後退りをする。

「何って……夜這い?」
「そんなことは聞いて無い!なんで此所に居るのさ!」

「だから、襲いに「もういい!」」
弥勒の主張は珊瑚の怒鳴り声に書き消された。

冷静に辺りを見回すと、半妖の少年と異国の少女の姿が見当たらない。

「あれ、かごめちゃん達は…?」

すると弥勒は大きな溜め息をついた。
それから、それはですねぇ、と人差し指を珊瑚に突付け、解説し始めた。
「夜中に二人が起きていったので、後を追ってみたんですよ。そしたらですね、人気の無さそうな草原に入り込んで…」
と、そこで一回切ってから、珊瑚の両肩を掴み、
「そのまま…」
と自分もがっくりと肩を落とした。







(続きます。)



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