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夏っぽくない…。
久々の更新ですね。
現在5作品掲載中です~。

*優越感*

「脱げ」

シキは扉を開けるなりそう言い放った。

「…シキ?」

どうしたの?と尋ねるアキラはゆったりとベッドから体を起こす。
けだるげなその表情は昨夜の情事のせいだろうか。
体のいたるところに未だ紅い花を散らせている。
まったく動く気配のないアキラにひとつため息をついて、シキがアキラのシャツのボタンを片手で器用にはずしていく。
アキラが何かを言うまもなくあっというまにシャツが取り払われた。

「これ…なに?」
「浴衣だ。知らないのか?」
「着物とは違うの?」

以前、もっと寒い時期に着物を着させられたことがあった、とアキラはぼんやりと思い出す。
あの時も、唐突に着させられたのだ。
ただとても窮屈で、すぐに脱いでしまったのだが。

「そもそもの用途が違う。形はさして変わらないが」
「ふぅん…」

着物と違いあくまでも浴衣はバスローブのような役割しかないのだが、そんなことはやはりアキラにはどうでもいいことだった。
もちろんシキもアキラが興味を示さないことはわかりきっていたので詳しく話すことはなく。
シキにされるがままに両腕に浴衣を通し、ふわり、と素肌に直接浴衣を身にまとう。
床へ膝をついて腰紐をアキラの腰へ回したシキは手馴れた様子だ。
しかしそんなことよりもシキが自分のために膝をついている、ということに対してアキラは言いようのない優越感と、悦びを感じていた。
この目の前の主は何者にも屈することがないと知っているからこそ。
珍しく自分の目線よりも下にあるシキの髪を面白がるように一房掬った。
指先を通り抜けていく心地よい感覚にその口元が満足げに弧を描く。
きゅ、と帯を結ぶと全体のバランスを確かめるように細かいところを整えられる。

「…なんか変な感じ」

普段シャツ一枚なのだからそう感じるのも仕方がないだろう。
くすくすと笑って、ふたたびベッドへと腰掛けたアキラの隣にシキも並ぶ。
小さな箱から出した真紅の花飾りをアキラの髪へとめてやる。

「シキは?」
「…?」
「シキは着ないの?」
「俺はいい」
「なんで?」

きればいいのに、とアキラは首をかしげる。

「そしたらシキとおそろいだ」

シキならきっと似合うのに、とアキラはその姿を想像してか微笑んだ。
シキがアキラの頬に手のひらを滑らせる。
滑らかな感触に飽くことはないのだろう、しばらくそうしていたが不意にアキラが動いた。
隣のシキの首に腕を回すとまたがるようにして座る。
足を開きにくいのか少々苦戦しながら浴衣を崩した。
浴衣の合わせ目から覗く細い太ももが妙に色っぽい。

「せっかく着せてやったというのに」

その言葉に非難の色がないのを感じとったのかアキラはふふ、と吐息のような笑いをこぼす。

「シキ…これ、女物でしょ」
「だからどうした」
「似合ってる?」
「そうだな…悪くない」
「そっか…ならいいや」

それならいいんだ、とアキラが笑う。
シキが傍にいればそれだけで大抵のことはなんだって許容してしまえるのだから。



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