愛してる


愛してる


ただその言葉にしがみついて…







**Ｌove Ｗord**





「愛してる…」



真っ白なシーツの海に溺れて。


アナタは口癖のように愛を囁く。



ぼんやりと見つめる天井に、微かな光。


抱き締めた、アナタの広い背中も。
息をするように絶え間ないキスも。

融け合うように密に重ねた体も。
痛みさえも心地よく感じる脳も。


すべて、すべて現実なのに。



「愛してる…」


アナタのその言葉だけ。
無駄に宙に浮いたまま。


愛の言葉を囁かれて、一瞬の錯覚。
愛されてなどいないのに、幸福感。



本当は気付いているの。

愛の言葉にしがみついているけれど。

私たちの関係に、愛なんて、無いんだって。


「愛してる」



所詮はうわべだけの愛の言葉。


アナタにとっては便利な言葉。

あたしにとっては苦痛な言葉。



「愛してる」


囁かれて涙が溢れた。


白いシーツの波にのみこまれて。
私は望んで意識を手放した。






目が覚めれば、あの熱はどこへ消えたの？

一人きりで。


ぼんやりと見つめる天井に微かな光。



ほらね。

やっぱり愛の言葉は嘘だったと、突きつけられる。




それでも構わないとさえ思い始めた私は既に末期。




零れる涙に偽りはないけれど。


私からの愛はきっと、届きはしないけれど。



それでも。


アナタからの嘘がなくては、立ち上がることすら出来ないから。





「愛してる」



ただ、その言葉にすがりつくしかないんです。




お願いだから。



せめて夢の中では、真実を私にください。