【美味しくなくはないんだ。】




「お口に合うかしら?」

未経験の味に舌が悲鳴をあげているところに、製作者がそう言ってくる。
もしこれが自分の家だったりしたら、いやどこかの店だとしても、投げ捨てているかもしれない。

「えっと・・・あの・・・」

ニーナは返答に困っていた。右手にある食べ物なのか分からないものを握ったまま。

「完成まであと少しです!ちゃんと食べて一緒にがんば・・・」


「えぇぇぇぇぇぇ!!!今さっき、何て言った!?」
「は?」

ロイドがなかば絶叫しながら、チェアを半回転してセシルに向かって言った。

「コレさぁ!口にあう人種なんていないよ!それ何て拷問っ!?」
「そんな・・・」
ロイドがそんなにも怒る姿を見たことがなったし、セシルが落ち込む表情を見たことがなかったニーナはこの瞬間の空気の悪さを感じた。いつもの二人じゃないと思った。

とっさに、セシルをフォローする言葉を口にする。まだ悲鳴が続く、その舌を動かして。
「だ、大丈夫です!おなか空いてたから・・・食べて頑張りますっ・・・!」
それくらいしか言えなかった。

ロイドは呆れたように溜息をついて、自分の持ち場に体を向けた。
時間も迫る中、食べ物のことくらいで言い争っている場合ではなかった。
ひとまず、セシルもとりあえずの機嫌を直して、仕事に戻った。

それから暫くして、各自の作業が終わると、制作にロイドとニーナが行き、ルルーシュのもとにセシルが戻ることになった。
セシルを見送った後、ロイドとニーナも別の実験室へ移動することになったのだが、ロイドがちょっと待ってと言って、席から立ち上がらなかった。ニーナがロイドのデスクを見ると、あのホットドッグを食べているロイドがいた。顔をしかめながら。



「結局、食べるんですね。」

「美味しくないけどね。」




「本当は?」

「・・・・。」


ふいと顔を背けたロイドの表情は、どこか照れていうようなものがあった。





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