風邪ひきさんを看病してあげるなんてゆめだ。こんなのつまんない。

「僕はきみのお世話をしてあげたいんだってば」

ねえきいてる?
隼人は僕のオデコに熱さましのシート(夏のあいだは貼りたくなっちゃうあれ)をぺたっとやって、上からぺしりと叩いた。
ちょっと、なにしてるの。

「そんなことしたらきみの手にふれてもらえないじゃない」

嫌だそんなの。
冷たい指にふれていてほしい。風邪にきくのはだいすきなてのひらなんだから、その手が熱を取り除いてくれなきゃだめ。そうしないと僕の病気は治らないの。

「面倒だから嫌だ」

といったあと、隼人は「でもいいたいことはわかる」と僕の頬にふれた。
僕はそう隼人にふれてあげたかった。隼人が風邪をひいていたら。僕は指先を冷やしてやさしくしてあげられたのに。いっつもじゃまされる。季節のかわりめ。

「隼人はばかだから風邪ひかないんだ…」

「座薬いれんぞてめえ」

それは僕がやりたい。じゃなくて。
隼人がやさしいのがうれしい。だけど隼人がやさしいのは常だから、僕がやさしくしてあげるきっかけがほしいだけなんだ。

「夕飯…食うだろ?何にする?」

ゴハンより、この手をはなしてほしくないなあ…。

「隼人もここで一緒に食べてよ」

「さみしいならそういえ」





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