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ねじれ木の森の案内人:アーチャー

 彼の名は、バラゴといった。
 村を襲ったオーガーを討伐するために雇われた討伐隊の一員だった。
 ノードもまた、土地勘を買われて彼らに同行していたのだ。
 集められた十人ばかりの戦士はみな、全身を鎧で固め、すっぽりと身を隠せるような大盾の完全武装だったのに対して、バラゴは革の胴衣だけの身軽な恰好だった。その代わりに、彼は見事な作りの長弓を携えていたのである。ノードも試しに引いたのだが、見かけよりもずっと強力な代物だった。
「竜さえ射殺せそうだな」
 そう評すると、バラゴもまんざらではない様子で、どうやら、腕は確かなようだ。
 一行は、わずかな水が流れるだけの谷を見下ろすように山の斜面を進んでいる。この谷がオーガーの通り道だとノードは読んでいた。
「案内人、当たりだぜ」
 谷を進む影にいち早く気がついたバラゴが身を隠すよう、合図を送る。戦士のひとりが呻いた。「数が多すぎる」
 二十を超すオーガーの群れが村へ向かって移動しているのが見える。最初の襲撃は斥候か、とノードは推測した。真正面からでは無理だ、と悩んでいると、
「少し戻ったところに開けた河原があったろう。そこに餌を仕掛けるってのはどうだ」
 バラゴが言った。
 他に策もなく、一行は彼の提案に従うことにした。
 それぞれが所持していた行動食をかき集め、河原にわざとらしく置いておく。大した量ではないが、気をとられているところを切り込む作戦だ。
 やがてオーガーたちがやって来て、思惑通り、置かれた荷物を荒っぽく探り始めた。
「……数を減らさないとな」
 バラゴは、弓に四本もの矢を同時につがえる。ノードは彼のその射撃術だけでなく、それを直接狙うのではなく、天高くに向かって構えていることにも驚いていた。
「まあ、みてな」と、ぎりぎりにまで引き絞られた弓が、四本の矢を放つ。さらに、素早く次の四本の矢を放つ。目にもとまらぬ速度で繰り返していくが、一回の射撃ごとに角度と弓を引く強さを変えているのが分かった。
 そして、まっすぐに群れを狙った最後の矢が放たれた瞬間、これまでのすべての矢がほぼ同時に、オーガーの群れに襲いかかった。
 矢の雨を降らせたのだ。それも、たった一本の弓で。その場にいた誰もが舌を巻く、見事な技だった。
 混乱状態の群れに向かって、戦士たちは斜面を駆け下りていく。
 その夜の祝杯の席では、偉大な射手に惜しみない賞賛と酒の雨が降ったのは、いうまでもない。



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