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お礼小説vol.1
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ある日のこと……



「お帰りなさいませ、叶様」

「ん、ただいま」



叶が任務を終わらせ、家に返って来たのは午後4時すぎ。
巽に上着と荷物を預けていると、何処からか甘い香りが漂ってきた。



「…あれ?この匂い…」

「はい。只今片桐様が厨房でお菓子を作られているようです」

「へぇ。じゃあ様子でも見に行ってみようかな…」










「翔利さん」



広々とした厨房に料理人と翔利がいた。
料理人は早くも夕食の準備をしていて、その人達の邪魔にならないように翔利は端の方でお菓子を作っていた。

コンロにはチョコの入った鍋。
甘い香りの正体はこれのようだ。



「ん?ああ、叶ちゃん。お帰り」

「ただいま。流兄は…単独任務ですか?」

「ああ。アイツ、出て行くときに“チョコ作っとけ”って言い残して行くもんだから、俺は偶の休みも惜しんでチョコ作りしてるってわけ」

「…お疲れ様です」

「どーも。…味見、してみるか?」



翔利はまだ液体状のチョコをスプーンで掬い、叶に差し出した。



「え…いいんですか?」

「勿論。ほら、アーン」

「……」



翔利の予想外の行動に、叶は思わずキョトンとしてしまった。



「あの…自分で食べれますよ」

「いいから、いいから」

「………」



笑顔でずいっと更にスプーンを口元に近づけられ、叶は渋々と翔利の手からパクリとチョコを食べた。



「…あ、美味しい…。いつもと少し味が違いますね」



口の中に広がるチョコはいつもと違って、少し苦めで何処かさっぱりとした味わいだった。



「今回のは隠し味が入ってるからな」

「隠し味…?」

「そ。知りたい…?」



何故か腰に腕を回され不思議に思いながらも叶は頷いた。
すると、翔利は口の端を上げ、不敵に笑むと叶の耳元に唇を寄せ…



“惚 れ ぐ す り”



わざと耳に吐息が当たるように囁かれ、叶の肩がビクリと揺れた。


翔利さんの声、エロすぎ…!!///


叶の頬は赤く染まっていった。



「…段々動悸が速くなってこないか?」

「…っ、耳元で言われたら誰だってそうなりますよ!それに、翔利さんには琉兄がいるんですから、俺にこんなことしないで下さいっ!」

「は?……え…っ?!」



叶は真っ赤になった顔を隠しながら厨房から飛び出して行った。
一人残された翔利は、暫くただ呆然と叶が出て行った方を見つめていた。




  ----END----




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