ペコリ!ありがとうございました!
ささやかながらお礼をご用意いたしました。
舞台が一応現代(?)のパラレルなロク刹小説で続き物です。
12はもう一回パチパチしていただけるとご覧になれます。1~10はこちらに置いてありますのでどうぞ。
13以降は今後、拍手のお礼・ペコリ小説として随時連載予定ですー。

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繋いだ手はバニラの香り──11






大都会の中の大豪邸。メイドにボディーガード。そして専属の家庭教師。
今まで全く縁のなかった環境に飛び込み、目を白黒させているうちに一日はあっという間に過ぎた。
池か湖か、と思うほどに大きな風呂に入り、ベッドに身を横たえて刹那はふぅ、と息を吐いた。今頃になって眩暈がしてきたように感じられて瞑目する。間違いなく疲労しているのに、とても眠れそうにない。
明日からどんな生活が待ち受けているのか、少しも想像できない。
(少なくとも人が死ぬところを見ることはない)
それが幸福とイコールであるとは限らないけれど。

土煙。その向うの火柱。断続的な銃声と、悲鳴……、血飛沫。

「っ!!!」
瞼の裏を駆け巡った光景に、刹那は目を見開いた。視界一面の天井が石造りの灰色でないことに、安堵とも落胆ともつかない溜息が漏れた。
(俺はもう、あそこにはいない)
刹那がいるのは、見知らぬ土地の大豪邸。一人で使うには広すぎる部屋の寝台。
ゆっくり、深呼吸をする。
ここでは誰も命を奪い合ったりはしないはずだ、と刹那は自分に言い聞かせるように考える。今の刹那は大きすぎる銃を抱えた少年兵ではない。シルクのパジャマを身につけた良家の養子だ。そしてその刹那の周りを取り巻くのは、くすんだ軍服の背中ではない。ここにいるのは美人のメイドと、柔らかな笑顔のボディーガードと……、バニラの香りを纏う家庭教師。
ああ、そうだ。そうだった。
(ここには)
ここには、彼が。
ロックオン・ストラトス。
名前と同時に、自分に向けられた笑顔を思い出す。なぜだか、急に呼吸が楽になったような気がした。
彼にもう一度、しかも同じ日のうちに会えるだなんて思ってもいなかった。過ぎた偶然だとは思うけれど、それは素直に嬉しかった。
彼が、ここに。それどころか、すぐ隣の部屋に。
そう考えることで、今度こそ本物の安堵が刹那に訪れた。

(少なくとも明日も彼の顔を見ることができる)
それが幸福とイコールであるとは限らないけれど。
そう思いながらも、極めてそれに近い気分で、刹那は再び瞼を閉じた。












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