【雪ではなく 僕 が】 さくっさくっと人が立てる音がする。 その後ろの雪は少しくぼみ、薄汚くなってしまっていた。 「随分と」 腕に花を抱えた者が歩いていた。たった一人で。 「雪が降りますね」 フードを頭から落とし、体に降った雪を手で叩く。 「困ったものですね」 苦笑をするのは、まだ年若い男だった。 若草の色をした髪はふわふわと柔らかそうで、黒の色をした瞳は静かな光をこもらせていた。 「こう寒くては、敵わないでしょう」 雪の上なのも気にせず、膝立ちで座る。 「貴女は、寒いのが苦手でしたからね」 積もった雪を丁寧に素手ではらっていく。 「雪が降るたびに寒ーい死ぬー!! と大騒ぎをして怒られてましたよね」 はあっと手に息を吐き掛ける。そしてまた雪をはらう。 「さ、これで少しはマシになったでしょう」 全てはらい終わり、ほんのわずかだが、微笑んだ。 花を捧げた後、思い出したかのように、青年は唇を合わせた。 また、はらりと雪が彼に触れた。 「…ああ、もう…本当に困った方ですね」 苦笑して立ち上がる。 「いい加減にしておきなさい。シルクが…寒がってしまうでしょう」 冷たく冷えた、美しい石の前で彼は雪を手に微笑んだ。 降る雪は あはにな降りそ 吉隠の猪養の岡の 寒からまくに +++++++++++ 拍手有難う御座います!! よければコメントの方もどうぞ! 返信は作成日記の方にて致します。 もし個別でのコメントでしたら、文章のどこかに名前の方を書いて下さいませ。 |
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