俺の名前は片倉小十郎29歳
一応大手の会社に就職して今の生活に不満はねぇ…だが一つだけ不満をあげろと言うなら俺は

幽霊が見える

ってのをあげるな

実家が神社で俺の家系は代々神主をしてる。だからといって神主の兄さんや親父が霊感があるわけでもない、強いてあげるなら曾祖父があったみたいだ
隔世遺伝ってやつか?こんな力遺伝する必要なんかねぇ
毎度毎度幽霊に追いかけられる俺の身になってもらいたい

『ネェ貴方ハ私ガ見エルノ?』

ほら言ってるそばからまただ…多分浮遊霊の女が俺に近寄ってきた
こういう時には無視が一番だ
俺には見えない聞こえないそうつぶやきながら通り過ぎようとするもそうは問屋が卸さない
幽霊は見抜いていた

『嘘吐キ、貴方私ガ見エテル』
それまでの穏やかな顔が一変般若の顔になった

『嘘吐キは嫌…貴方ナンカ殺シテヤル!』

「っ…!?」

反射的に避ければ顔の横を無数の黒い手が通り過ぎる
何かはわからねぇが本能的に危ないとわかる
捕まったら多分あの世行きだ

『ナンデ逃ゲルノヨ…』

こんな状態で逃げない奴がいたら見てみたい!
そう心で突っ込みながらも俺は走り逃走を試みるが相手の幽霊の方が足が速かった(幽霊に足はないか)
徐々に間が縮まり俺が死を覚悟したそんな時、いきなり体が引っ張られ気がつけば見知らぬ屋敷の玄関に座り込んでいた

「なん…だ…ここ?ってかあの幽霊…っ!」

「ghostはここには入れねぇよ」

いきなり背後から声が聞こえ驚きながら振り返った
そこには右目を刀の鍔で作った眼帯を付けた着物姿の今時珍しい純和風の青年が立っていた

「えっと…いきなり家に入っちまってすまない、お前は…」

体が引っ張られたと言っても見ず知らずの知らない人の家に入るのはマナー違反だと思い謝ったがその青年はクスリと笑い

「この屋敷に入ったのは必然だ謝る必要はねぇ、とりあえず上がれよ話はそれからだ」

くるりと背を向け青年はスタスタと屋敷の奥へと戻っていった
「…お邪魔します」

靴を揃えれば俺も青年の後を追い屋敷の奥の一室に行き着いた

「座れよ」

青年は膝置きに身を任せるように座れば煙管を取り出し吹かし始めた
俺も青年の前に正座した

「あんた名前は?」

吐き出した紫煙を目で追うように見つめながら尋ねた

「片倉…小十郎」

「ふぅん…歳は?」

「29…だ」

こいつ何者だ?
怪訝そうに答えれば青年はアンティークな灰皿にコンっと煙管を打ちつけ灰を捨て此方を見つめた

「本名と歳を偽りなく簡単に教えるとはな…お前馬鹿だろ」

「なっ!?」

あったばかりのどう見ても年下に馬鹿呼ばわりなんざ…青筋が浮かぶ

「本名を知られることは相手に魂の端を掴まれるようなもの歳は生きてきた道と生きていく道を白日のもとに晒すようなもの…お前は同業者じゃねぇんだな」

ニッと笑いながら俺を見つめてくる青年
同業者?何を言ってんだよ

「小十郎、その懐にあるもの出せ」

胸ポケットを指差す

「これか?」

ポケットには御守り代わりに親父に持たされた曾祖父の数珠が入っている
それを取り出せば政宗は水の入った綺麗な彫刻が施されたお盆を取り出し数珠を真ん中に浮かべた小皿の上に置いた

「…名を片倉小十郎、この者の歩みし道歩む道惑いし道を示せ」

盆の上に手を翳した青年は集中しながら小さく呪文めいたものを呟いた

「お前、今日みたいなhappeningは初めてじゃねぇだろ」

「え?」

「childの頃からずっとghostが見えて何度となく命の危険に晒されてるな、そのたびにこの数珠が守ってくれてる結構強いpowerが込められてるなこの数珠」

「なんでお前…」

全部当たってる、コイツの言うとおりガキの頃から幽霊に追いかけられることはあったがそのたびに何か知らないがいつも幽霊は消えていった…あの数珠が守ってくれてたのか

「Oh…だがこの数珠もうお前が守れるくらいのpowerはねぇ…だからさっきの奴みたいなのが来たんだな」

数珠を持ちいたわるように撫でる青年
その通りだ、今日みたいな黒い手は初めてだった

「お前いったいなんなんだ?何者だ?」

「俺は政宗、陰陽師…て言えばわかるか?」

艶美な笑みを浮かべ俺を見つめてくる政宗

「マジかよ…」

陰陽師?映画で見たことがあるがそんな奴本当にいるのかよ…

「信じる信じないはお前の勝手だがお前の悩みを解決出来るのは俺だけだと思うぜ?」

「俺の悩み?」

「ghostを見えないようにしたいんだろ?」

「…出来るのかよ、んなこと」

じっと政宗を見つめる

「対価さえ払えばな?」

「対価?」

「無から有は生まれない、何かを与えるにはそれに応じた対価が必要だ与え過ぎても貰いすぎてもだめだ、過不足なく」

「具体的には?金か?」

「例えばお前の大切な物、人、命ってのもあるな」

「命を取るのか?お前は悪魔かよ」

「悪魔じゃねぇよ、命を対価として貰うときはこっちも命を与えないとならねぇ、さっき言っただろ?貰いすぎたらダメだってだから命なんてものはそうそう要求しねぇよ」

クスクス笑いながら長い前髪をかきあげる政宗

「…で俺の対価はなんだよ」

出来ることならこの霊能力を無くしてほしいが一体どんな対価を求められるんだ?

「Ahー…お前って一人暮らしか?」

「あぁ」

「料理洗濯家事全般出来るのか?」

「一応、料理は好きだからそこらへんの野郎よりは出来ると思うが」

「そうか…」

何がいいたいんだこいつ

「よし小十郎、お前は今日からここで住み込みの家政婦をしろ」

「はぁ?」

思わずすっとんきょんな声が漏れる

「お前の働きが対価に見合った時お前の霊力を無くしてやる」

そう俺を見つめる政宗の瞳は挑戦的で艶美で何故か俺の心を掴んだ

「…分かった家政婦でも何でもしてやるよ」

「いい返事だ小十郎よろしくな?」

にこっと微笑み差し出した手を俺はギュッと握りしめた


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