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以下お例文となっています。




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 ずる、と何かが滑り落ちる気配を感じると、次いで右肩に温もりがのしかかり。
 読んでいた本から目を外しそちらに視線を移す。
 ふわふわと揺れる金の髪に、思わず笑みが零れ。
 静かに本を閉じ、慈しむようにその金糸を優しく撫でて。
 と。
 扉がひかえめにノックされ、どうぞ、と小さく返すと扉はゆっくりと開かれ。
 そこから顔を出したのは、アニスだった。
「大佐、明日のことなんですけどー、って。ガイが寝てる! 珍しー……」
 アニスが珍しがるのも仕方がない。
 野営のときは率先して見張りに入り、見張りの番でもないときでも眠りは浅く、本来ならば先程のノックの音でも目を覚ましてしまう場合がある。
 にもかかわらず、だ。
 熟睡、とまではいかないが常よりは深く眠っている様子にアニスは少しずつガイに近寄り。
 覚醒しているときならば確実に避けられる距離まで近付いた。
「アニス。ガイだって疲れているのですから、起こさないであげてくださいね?」
 それにアニスは無言で頷くと、ガイの目の前にまで来るとゆっくりと手を伸ばし。
 開かれた窓から流れ込む風にふわふわと揺れる金糸に遠慮がちに触れた。
 そこまでされてもガイが起きる様子がまったくなく。
「……ガイって、勿体ないですよねー」
 今までずっと思っていたことを無意識のうちに口にしてしまい。
 柔らかく金糸をいじりながら、ぽつり、と続けて。
「優しくて、かっこよくて、料理は上手で、なんと言っても伯爵様で。……なのに」
 ぴたり、とそこで言葉を区切り。
 ジェイドを半眼で見やると、わざとらしい大袈裟なため息を吐いて見せ。
「なんですか、アニス?」
 ジェイドはにーっこり、と白々しい笑みを浮かべながら。
「こーんな大佐の毒牙にかかっちゃったんだから、ホント勿体ない……」
 はぁ、とまたため息を吐き出すと柔らかな金糸から手を離し。
「明日のこと、ちょーっとお話したかったんですけど、こんな様子じゃ無理そうなんで。やっぱり明日でいいですっ。じゃ、おやすみなさーい」
 口早に言い切ると、ジェイドの返事を待たずに部屋から出ていってしまった。
 ぱたん、と扉が閉められた瞬間に、肩からずるりと身体が滑り頭が膝の上に落ちた。
 そんな衝撃があったのにも関わらず目を覚ます気配もなく。
 あどけない寝顔に笑みを浮かべ。
 優しく金糸を撫ぜた。





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