01.まずはかわいがってきにいってもらいましょう.....

---- 奥村燐 / 青の祓魔師


   








 
「構ってください」



行儀良くちょこんと座って、満面の笑顔で彼女は言った。

その性格に反して、彼女――千姫は小さい。長い黒髪を滑らせる肩は華奢だ。

だというのに、可憐という形容詞が似合わないのは何故だろう。



「…は?」

「だから、構ってください」

「構えって言われても…どうすれば良いんだよ」

「………」



少し考えるような素振りをしてから、不意に千姫は目を輝かせてぽむ、と手を打った。

そのあまりにキラキラとした視線に、嫌な予感がしたのは、これはもうある意味千姫の人徳だろうか。



「あ、」

「ストップ。変なこと言うなよ頼むから」

「まだ何も言ってません」

「千姫が目輝かせてるときは、大抵変なこと考えた時だろ」

「決めつけは良くないですよ?」

「決めつけじゃなくて事実だろーが」



そう長い付き合いとも言えないが、燐から見ても千姫は変な奴だった。

大人びた見た目に反した、奇抜で奇妙な言動と行動。時折見せる、妙に子供っぽい仕草。

それを集約したのが、次に彼女が口にした言葉かもしれない。



「んー…じゃあ、頭を撫でてください」

「は? 頭?」

「はい。頭です。こう、大人が子供に良い子良い子、ってやるような感じですね」

「そんなんで良いのか?」



にこにこしながら頷くので、要望通りに燐は千姫の頭を撫でてやる。

気分的にはクロを撫でてやっているのとあまり差はないのだが、撫でられている当人は嬉しそうだ。

あまりにも嬉しそうに微笑っているから、思わず、燐は苦笑する。



「…こんなんで嬉しいのか?」

「はい、嬉しいですよ」

「ふぅん…そういうもんかね」



不意に、大人しく撫でられていた千姫が、膝を立てて身を乗り出す。

その対角線上にいた燐に、彼女は勢いよく抱きついた。

当然、その勢いのままに二人は床に倒れこむ羽目になる。



「うわっ!? ちょ、千姫!?」

「燐!」

「なんだよ!?」

「大好きです!」

「……」



満面の笑顔で当たり前のように告げられた、ストレートな好意。

一瞬唖然としてまじまじと相手を見つめてから、燐は笑った。



「…知ってるよ、ばーか」



まるで飼い主にじゃれつく子犬みたいだな、と。

無邪気に微笑う千姫の髪に、燐は軽く口づけた。













 

珍獣の飼い方10の基本     

リライト / 甘利はるき様




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