[ハローマイディアー]





今でも思い出せる、僕の彼女。世界で一番大切だったその人は違う国で

あっけなく死んでしまった。あっけなくという言い方は彼女に失礼かもしれない。

けれど人が死ぬにしてはやけに酷く、そして短かった。



ああ、僕の大好きな人。きっと今は土の中で穏やかに眠っている女性。



本当なら僕も一緒に君と同じ世界に行くべきなのだろうけど、今はまだ土の中

には入れない。薄情かもしれないけど、今、守るべき大切な人がいるんだ。

目の前で僕のプリンをぐちゃぐちゃにしている妹。…今シスコン?!って土の中で

叫んだでしょ。そうか、君には言って無かったよね。血は繋がってないんだ。



(そういう問題じゃないのよ?)



うん、わかってる。でもさ、好きなんだ。どうしよう。どうしようもないよ。

この好きってどういう好きなんだろう。家族愛?それとも女の子として

好きなの?あ、わからない。



(…わからないって、駄目駄目な人)



うん、確かに僕は駄目だよ。君が捕まる時、僕が「君だけでも逃げて!」

ってヒーローみたいに言えてたら君は死ななかったのかもしれない。



(そう?貴方もそうだけど、私も浅はかだったのよ?)



……じゃあ許してくれると問えば、頭の中から彼女の声が消えた。そりゃ、

許してくれないよね。逆の立場だったとしたら(女と男で根本的に違うけど)

僕だって許せない。君は死んだ。僕は生きている。それはどうやっても変わらない。

代わってあげたい。こんな僕より聡明だと評判だった彼女が生きていた方がいい。

だって、そうだろ?確かに妹は守りたいけど、僕はシスコンヤローだ。



彼女の母親は、彼女の葬式に僕の家族を出席させてはくれなかったらしい。

それはまるで彼女が僕に会いたくないと言っているようで、そのことを知った

時は悲しかった。妹が慰めてくれて、もっと悲しくなった。

白い箱に入った彼女は想像するしかない。彼女に送りたかった言葉は直接

送ることは出来なかった。その反動か、声が聞こえるようになったけど。



(私の声が聞こえることは貴方にとって不幸かしら)



不幸じゃないさ。むしろ嬉しいよ。例え声だけの存在でも僕は君に許しを

乞うことが出来る。声を忘れずにすむ。生きていたことを覚えていられる。



(あっそ)



…短くない?異常に返答短くない?幽霊でツンデレって一体どんな新ジャンル?

返事は無い。気づいたら箪笥の扉が開いていて、何一人で喋ってるの?と

言いたげな妹が居た。なんて空気の読める女性なんだろう。



「…やあ、シクラちゃん。」

「今IQ高そうな会話してなかった?」



さあ知らないなと僕は呟いた。



「これからもよろしく、僕の愛しい人。」







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