拍手ありがとうございました!!












































 三人の男子生徒も、勿論僕も、有り得ないほどタイミングよく皆同じ方向を向いた。

 その先には先程会ったばかりの、実は隠れドジっ子な銀髪おかっぱことイザーク・ジュールが、眉間に皺を寄せてこちらを睨み据えていた。

 「何をしていると聞いている。さっさと答えろ」

 語調を荒らげるでもなく静かに言葉を紡ぐ彼は、何故だかどこか恐れを感じさせる雰囲気を漂わせているかのようだ。

「イ、イザークじゃねえか!!吃驚させんなよ・・・」

 余程驚いたのだろうか、ミゲルが胸を撫で下ろしながら安堵したかのようにそう言った。どうやら、イザークの怒りを気にも留めていないらしい。慣れているのだろうか。

 「しっかしお前、先帰るとか言っておいてまだ帰ってなかったのか?」

 ディアッカも彼の怒りなど露程にもかけず、そう問うてみせた。

 「帰ろうとしたら、担任に捕まった挙句に司書にも面倒を押しつけられた」

 簡潔にきっぱりと答えたイザークは、そう言い切るなり不機嫌そうにそっぽを向いた。

 「は?司書のお姉さんが、どうかしたのか?」

 どこか素っ頓狂な声をあげたラスティは、怪訝そうに眉根を寄せつつ身を乗り出した。

 「どうかしただと?『君のご友人方が図書室で集中して本を読みたいから、俺たちだけにして欲しいって言ってたから出てきたけど、心配だから様子見て来てくれる?』と言われて来てみたら、何だこれは!?本を読むどころか、規律を破ってどうする!!??」

 ここで言う規律とは、言わずもがなこの図書室での過ごし方であろう。

 「ああ、そういうこと。でもま、いいじゃん?ちょっとくらい」

 徐々に剣幕になってくるイザークに少々たじろぐも、ラスティはまあまあとでも言うように両掌を彼に見せた。

 「ちょっとくらいも何もあるか!!いい加減にしないと、貴様ら全員そこの窓から落とすぞ」

 それは正直勘弁願いたい。そもそも僕は、巻き込まれた側だ。落されそうになる前に、言った方が賢明だろうか。

 それにしても気になるのは、彼の後ろである。

 なんだか先程からちらちらと垣間見える色彩に、何故だか僕の心臓が五月蝿い。

 「アス、ラン・・・・・?」

 何故だろう。自分でも無意識のうちに呟いた声に、誰よりも自身が一番驚いた。











































メガネを掛けた婚約者 ?











































 「え、アスラン!?」

 そう声を上げたのは、キラの一番近くにいたラスティであった。

 それに反応したのか否か、イザークの後ろからそっと顔を出したアスランに、僕以外が皆目を見開いた。

 「あれ?アスラン、君帰ったんじゃなかったの?」

 驚きを隠せない彼らを放って、僕は気になっていたことを声に出した。

 するとそう間を置くことなく、少々小さな声で答えが返ってきた。

 「いや、なんていうか、先に帰るのも・・・何かなって思って・・・・・」

 それはつまり、僕に気を使って待っていてくれたと言うことだろうか。

 例えそれが体面を気にしているだけだとしても、僕の胸を躍らせるには十分な言葉だった。

 「も、若しかして、待っててくれたの!?」

 ああ、きっと今僕の表情は、喜びに満ちた笑みを消そうと必死で、可笑しな状態になっていることだろう。

 「う、ん・・・。そういうことに、なるけど・・・・・嫌、だったかな?」

 小首を傾げながら問うてくる彼に、僕は思い切り首を横に振った。

 「そんなこと、あるわけないじゃん!!ごめん、遅くなっちゃって。さ、帰ろっか!」

 彼の言葉があまりに嬉し過ぎて、自分でも呆れるくらいに喜んでいることに、そっと心の中で苦笑を零した。

 「へ?あ、うん。でも・・・」

 だが僕の心とは裏腹に、どこか不安そうな表情をする彼に、今度は僕が小首を傾げた。

 「俺たちのことは気にするな。気をつけて帰れよ」

 突然の横からの声に一瞬驚いたが、直ぐにアスランがイザークたちのことを心配していたことに気付いた。

 どうやら、幼馴染というのは本当のことらしい。

 「ああ。じゃあ、また」

 そうして柔らかく微笑んだ彼に、どうしてだろう。

 僕の胸が、ズキリと痛みを訴えた。





















 アスランに倣い図書室を出ようとした僕を引き留めようとしたラスティは、しかしイザークの制止により留まってくれた。

 それを背中で感じながら、僕はやや小走りで藍色を追う。

 何故か彼は、焦っているように見えた。

 歩調もいつにも増して、早い。

 けれど数秒ほどで彼の真横に辿り着き、彼に合わせて歩こうとしたが、それに気付いたのか否か、ほんの少し歩調がゆっくりになった気がした。

 「・・・若しかして、今日、急ぎの用でもあった?」

 珍しく、とは言っても話したりしたのは昨日が初めてなのだが、早歩きをしたことが気になったのでそれとなく訊ねてみた。

 するとアスランはピタリと足を止め、小さく自身の足元を見た。

 「・・・・・そういうわけじゃ、ないよ。ただ・・・」

 そう言いかけてやめた彼に、僕は怪訝に思い彼の瓶底メガネを覗き込んだ。

 「『ただ』?」

 彼の言葉尻を取って首を傾げるが、返事は一向に返ってこない。

 「・・・・・なんでもないよ」

 それどころか、たった一言で終わりにされてしまった。

 小さく俯く彼の様子が、それ以上の言及は許さないとでも言っているかのようで。

 僕はそれ以上、彼から聞き出すことは不可能だと悟った。

 「・・・そう」

 このまま無言なのもなんだか居心地が悪いので、取り敢えず納得の意を表してみた。

 すると彼は顔を上げ、僕を見つめてきた。

 瞳が見えずともわかるその視線に、少々たじろぐ。

 「な、何さ?」

 短く発した声に、アスランは苦笑を浮かべて唯一はっきりと見える唇を動かした。

 「何か、食べに行く?奢るよ」

 まるで先程のお詫び、とでもいうかのように言ってくる彼。

 少々迷うが、彼ともっと一緒にいたいという願望が脳裏を過ったのを、僕は小さく頭を振って消し去った。

 それでも尚募る願望、否最早欲望が、彼の提案を断ることを拒否していて。

 「うん!!」

 思わずそう、元気よく返事をしてしまった。

 しかしすぐにバツの悪さが込み上げて来て、「でも割り勘だからね!!」と言い足したのは、僕には珍しい譲歩であった。









































あとがき
どうも御無沙汰です。
拍手第十段。メガ婚?話です。
漸く10。長かった。なのにまだ二日しか経ってない。
話が進まなくて本当に申し訳ないです。
それでは、拍手ありがとうございました!!





ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。