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冬の待ち合わせ (恋するアフロディーテ byまどか)





直人さんは、まだまだお仕事中。

今日、何時に終わるか分からないって言っていた。

それでもね。
今日はね。

二人で、会いたかったからね。


メールした。



『何時になっても構いません。待っているので、来てください』



重い女かもしれない。
面倒くさい女かもしれない。

だけど、今日は譲れなかった。

だから、いつまでも待てるように、24時間営業のファミレスを指定した。


バッグをソファの隣に置いて、その上にコートを無造作に置いて。

注文したのは、取り敢えずはフリードリンク。
きっと長い間待つようになるだろう。その覚悟は出来ている。
そして昨日から準備万端だった。小説も持参した。


フリードリンクだけじゃ駄目だというので、フライドポテトも一緒に注文した。
小説を読みながらポテトを摘む。
そして時折、暖かいカフェオレをすすっていると、ふいに気配がした。

直人さん!?

そう思って嬉々として顔を上げると、全然直人さんじゃなかった。
ていうか、私日本語おかしいわ。
全然直人さんじゃないってどんだけよ。どんだけ直人さん不足なの。

直人さん、早く、早く。

待っているのは私の勝手なのに。
でも、我侭な私はあなたを早くと求めてる。

そしてそんな私を、全然直人さんじゃない残念な人が、えへらと笑って私を見下ろす。


「彼女、一人? ずっと本読んでるじゃん。俺と話そうよ、そっちの方が絶対楽しいよ」

絶対ってどういった根拠で話をしているの。
ていうか、何で勝手に私の前に座るの。私、許可してないし。あ、しまった。鞄前に置けば良かったわ。

むっとして勝手に座り込んだ男の人を睨みつけると、その人は更に笑みを深めた。

「あー、怒ってるの? でもその顔も可愛いなー。モデルとかやってない? スタイルよさそうだしさあ」

「知りません。私、あなたとお話したくありません」

私なりにはっきりと言っても、男の人は馬耳東風ってやつみたいで。

「うんうん、それはきっと時間が解決すると思うしね。あ、お姉さん、こっちにビール二杯」

やめて、私直人さん以外の人と飲みたくないし!!
憤慨しようとした、その時。

ぽん、と私の肩に手が掛かった。

そして、見上げれば。


若干肩で息をしつつ、ずれた眼鏡ながらも愛おしい素敵な彼氏が私を見下ろしていた。


「ご、ごめん、待たせた、まどかちゃん」

はあはあ言いながらも、何とか言葉を言い切り、私の前に座る、謎の男性に目を向けた。

呼吸を整えた直人さんは、彼を見据えると、目の前の謎の男性もまた、直人さんを見据える。
何のガチンコバトル?

「まどかちゃん、誰?」

「知らない」

そう言うと、直人さんはすう、と目を細めて謎の男性を見据えた。

「この人は、俺の彼女ですけど」

「は?」

は? じゃないわよ。

マジで警察呼ぼうかしら。
わたしがそういきりたつと、直人さんが察したのか私を制した。そしてヤツを見据える。

「彼女は……お前の相手になるような女性じゃない。失せろ」

にらみ合いが続く。

長い。
長い。
超長い。


そして目の前の謎の男が、盛大な舌打ちをして立ち上がった。
私を見下ろして、もう一度舌打ちをしようとして失敗する。何でだろう。

「くそっ、お前みたいな不細工本気で相手すると思ったら大間違いだぞって言いたかった!!」

そう叫んで、謎の男は去っていった。

なんだその捨て台詞。

ぽかんとした私は、とりあえず直人さんを見上げた。

「私、不細工なの?」

「大丈夫、違うよ」

「何が言いたかったのかしら?」

「うーん、まどかちゃんは分からなくてもいいと思う。というか、ごめんね、怖い思いをさせて」

そう言って、先ほどいた謎の男性の席に腰を下ろした。
ああ、安心するな。
目の前にいる人が変わるだけで、どうしてこんなに気持ちの変化が訪れるのだろう。

好き。
大好き。
その気持ちが溢れてる。


「怖くない。気持ち悪いだけだった。でも、直人さんが来てくれて、嬉しかったの」

そう素直に告げると、直人さんは表情を緩めて私に手を伸ばした。


「何時になるか、分からないって言ったのに」


うん、それでもね。

今日、この日は、二人で最後に一緒にいたかったの。

「我侭言ってごめんなさい」

そう上目遣いで言えば、直人さんは顔を真っ赤にして口ごもり、そして。


「店、変えようか」


そう言って私を連れ出してくれる。



今日は、仕事納めの日。

だから、最後は二人でお疲れ様を言いたかったの。


そしてね。
来年も、よろしくって言いたかったのよ。



でも、そんな私の気持ちを分かっているらしい直人さんは、落ち着いた店に連れて来てくれて、私の頭をそっと撫でた。


「まどかちゃん、一年間お疲れ様でした」

そう言われて泣かない人っているの? 私は駄目。すぐに泣いちゃうから。
嬉しくて泣いていたら、ご褒美っていって、真っ赤な顔の直人さんからキスしてくれた。
個室だから成せるわざだ。今後もデートは全部個室にしてもらおう。


来年も、再来年も。



ずっと一緒にいたくって。

隣にいさせてもらいたくって。


はにかんだ笑顔を、独り占めしたくって。

愛してるって、言ってもらいたい。




そんな私の我侭を、直人さんは全部まとめて抱きしめて。
気の毒なほどに真っ赤な顔で、



「年末も、こうして二人で一緒にいようね」

って囁いて、私を薔薇色の世界に撃沈させた。







大好きな、本当に大好きな直人さん。


来年も再来年もその先の何十年もずっとずっと、






私と一緒にいてね?
















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