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寂しいと、いえたらいいのにな。
「ほな、気ぃつけてな。」
また作り笑いで見送るんか。
眼尻まできっちり笑えてへんくせに。
アタシ、良い子ぶってる。
ちょっと悲しげな色見せて、平次に気にかけて欲しがって、
いやな女。
探偵の平次は、よくふらりと旅に出てしまう。
付き合う前まではよく同行もさせてくれた。
それやのに、最近は危ないからアカン言うてめっきりや。
なんやの、そないにアタシが大事なん?
嬉しさ半分、憎さ半分。
この距離感が少し切ない。
幼馴染の時は入れてた場所に、
最近入れて貰えてへん気がする。
なんやの、ほんまに。
目の前のショルダーバッグの肩紐に指をひっかける。
紐と平次の間に挟まれた指。
その指の背に感じる熱を愛おしいと思う。
ただ、愛おしい。
「平次。」
「ん?」
「なぁ平次。」
「なんや?」
「なんでもない。」
「なんやねん。」
その『なんやねん』さえ甘い声色で、
大好きやなぁて震えそうになって、
すっと息を吸って心を落ち着かせる。
大丈夫やと、言い聞かせる。
「和葉。」
「ん?」
「なぁ和葉。」
「なに?」
「言うてみ。我慢せんと。」
ハッとして顔を上げたら、ちょっと困った顔の平次。
顎をくいくいと突き出して、はよ言うてみとアタシを急かす。
「さみしい。」
「かわええな。」
胸の中に紅色の何かがじゅわっと滲む。
平次からは想像もでけへん言葉。
そんなことが言える男やったんや。
「握飯にして連れてってまいたいわ。」
「普通に連れてってぇな。」
頭を抱え込まれる形でぎゅうぎゅう抱きしめられて、
ああこのまんまおにぎりになって平次にくっついていけたらええのに。
なんてアホなこと考える自分に笑てしもた。
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