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さて、

「キス1分で消費されるのは6キロカロリー」

これをテーマにした新選組攻略キャラ5人のお話を一つずつお礼として収納させていただきました。
(ちょっとこの話題で盛り上がって全員分書きたくなったのです…)
SSL設定だったり、現パロだったりいろいろです。
最初に明記させていただきましたのでご参照ください。

なお、順番は、
沖田、斎藤、原田、平助、土方の順です。

というわけで、まずは沖田さんです。

読んでやってもいいぜーって方は下の方へとお進み下さい。












沖田×千鶴(SSL設定)








「天高く馬、なんだっけ?」

振り向いた沖田の顔はひどく楽しそうだった。
その顔に別の意図を読み取った千鶴は、一度ぐっと言葉を飲み込んだ後、諦めたように息を吐いた。


「天高く馬肥ゆる秋、です」

「あ、そうそう。そうだった。千鶴ちゃんは物知りだなあ」

そこまで出てたら後はわかるだろうと千鶴は大きなため息を、吐きそうになる直前で飲みこんだ。
明らかに千鶴に言わせたかったのだ。
ただ、その理由はすぐに思いつかない。

楽しそうな沖田を尻目に、千鶴はあれこれと考えを巡らす。

開け放たれた窓から秋風が吹きこんで、千鶴の髪を何度か揺らす。
誰もいない教室はひどく静かで、穏やかな空気が流れている。
時間もほんの少しだけゆっくりになったような、そんな空間。

だが、ぐるぐると考えているせいで、その穏やかさを全く享受できない。
むしろどこか居心地が悪い。
それは、この答えのなかなか見つからない考えのせいなのか、それともこの人と同じ空間に二人だけでいることなのか。

また新たな疑問が生まれて、千鶴は何もかも投げ出したくなる。
その瞬間、沖田が楽しそうに笑った。


「あ、沖田先輩、もしかして」

千鶴は唐突に一つの答えに辿りついた。

「私、太りました?」

沖田の返事を待つ間に、千鶴はぱたぱたと自分の体中を触ってみる。
確かに最近、秋の味覚が美味しくて、食べすぎな傾向にある。
ケーキだって、栗だのかぼちゃだの、秋限定のなんとかってたくさんあって、千姫や沖田と通い詰めている、ような気がした。

まずい。

きっと、太った自分を沖田は婉曲に突き放そうとしているのだ。

嫌われたらどうしよう…


思わず泣き出しそうになったその時、

「千鶴ちゃんって本当に僕の思う通りの反応を返してくれるよね。いつもいつも」

心の底から楽しそうに、沖田が笑う。
その顔を千鶴はぽかんと眺めていた。

「その顔! やっぱりね。あーあ。どうせ、太った私はきっと沖田先輩に嫌われちゃうって思ってるんだよね。本当にかわいいね、君は」

「え? え?」

頭の中が混乱して上手く言葉にも出来ない。
いや、答えなど一つしかないのだ。

結局、自分は沖田の掌の上で踊らされているだけ。
怒る、なんてそんな選択肢も出ないまま、千鶴は抵抗することなく降参していた。

「うーん、でもちょっとだけこの辺が」

沖田の手が伸びて、千鶴の腰を引き寄せた。
さわりと腰回りを沖田の手が這う。
びくりと千鶴の肩が上がって、千鶴の中の温度も上がっていった。

「お、沖田先輩! な、何やってるんですか!」

「何って確認。君が太ってないかどうか。ちゃんとね、目視だけじゃなくて触って確認しないとわからないし」

「だ、だからって! いきなりそんな!」

「いきなりじゃなかったらいいわけ?」

ぐっと千鶴が詰まる。
その間も沖田の手は止まることなく動いていた。
思わず千鶴が体を捩る。

「やっぱりちょっと千鶴ちゃん、ふと」

「や、痩せますから! ちゃんと元に戻しますから!」

だから! と千鶴が続けようとして、その声は誰の耳にも届かなかった。
強く千鶴の腰が引き寄せられて、いつの間にか沖田の腕の中にある。

そして、そのままキスされていた。

唐突な出来事に千鶴は身動きが取れないでいた。

そして、どれぐらい時が経っただろうか。
ひどく長いようで、それでいて短い、それぐらいの時。
唇が離れて、沖田の口が動いた。

「ねえ、知ってる? キス一分で消費されるカロリー」

「そんなこと、知るわけ、ないじゃないですか…」

「六キロカロリーなんだって」

耳元で囁かれる。
息がかかってぞくりと体が泡立った。

「ちなみに、腹筋十分で六十キロカロリー。っていうことは…」

沖田は最後まで言葉を紡ぐことなく、再び千鶴へキスをする。
そう、ちょうど一分経って再び唇が離れた。

「あと八回すれば、腹筋したのと同じカロリー消費だよ。僕が協力してあげるから、千鶴ちゃんは何もしなくてもいいよ」

千鶴の返事を待つことなく、三度目。

ここで、千鶴の意識も我に返った。

「あ、あの! 協力は嬉しいんですけど! その前に、私の心臓がもたないんで、あの、やっぱり自分でなんとかします!」

千鶴はつっかえ棒のように手を前に出して、沖田の体を遠ざけた。
それに沖田は抵抗することなく、するりと千鶴から手を離す。

「何だ、つまらないなあ」

「つまらなく、ないです」

「まあいっか。いつでも協力するから、気が変わったら、言ってね」

「変わりません」

千鶴はふいと顔を背ける。

「あ、変わらなくてもやっちゃうから。千鶴ちゃんには選択権はありません」

「そ、そんな! 沖田先輩!」

焦る千鶴を沖田の四度目のキスが襲う。



秋風は優しく、二人の間を通り抜けて行った。 




(終)


→次は斎藤×千鶴です。




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