「あ」

「あら、ちんかす侍さん。お久しぶりね」


日も沈みかけてきた頃、買い物帰りであるだろう
ポニーちゃんとちんかす侍(ちん侍)はバッタリと出会った。
出会ってしまった。


ちゃんと仕事してきたんですか?と黒い笑いを浮かべて
尋ねてくるポニーちゃんはちゃっかりとネギも装備している。


「うん、何か怖いね、その笑顔。
笑顔を怖いと思ったのは初めてかも」

「まあ、それは光栄だわ」



袋からネギを取り出してこないかとちん侍は警戒する。
この前はひどい目にあったものだ。
結局あの後、ゴリさんに追い回されて飲みにも行けず、
それどころかポニーちゃんの恐ろしい制裁も見てしまったのだ。


「何でそんなに震えてらっしゃるんですか?」

「あ、いや何でもないですポニーちゃ・・ポニー様」

「ポニーちゃんでいいですよ。ちん侍さん」

「だからちん侍ってひどくない?ポニーくん」

「ちゃんでいいですっていってんだろーが」



時々地雷を踏みそうな会話の中、
すっかり日は落ちて暗くなってきている。
見上げると一番星も輝いていた。


「わあ、キレイね。心が洗われるようだわ~。
そういえば今月はちゃんとお給料頂けるんですよね?」

「全然関係ないよね。
今の会話から思い出されることじゃないよね。
心洗われてないよね」

「あら、何か言いました?」

「・・今日大変だったんだよ。
最近忙しいし金はちゃんと入るって」



ポニーちゃんは少し笑った。
今度は黒くない笑顔だ。

すっかり暗闇になった空を月が照らしている。
今日はたしか満月だといっていた。



「デケー月だな」

「ほんと、キレイね」


光っていうものは、月だろうとお日様だろうと
人を少しだけ優しく、おかしくさせるものらしい。




「・・今日はちゃんと付き合ってやるよ、ポニーちゃん」


多分自分は疲れているのだ。
でも、グチはのろけだとぐちり屋は言っていた。


「たくさん飲ませて下さいな、ちんかす侍さん」



ポニーテールがとても嬉しそうに笑ったので、
たまにはおかしくなるのも悪くないかもしれないと、
ちんかす侍は思ってしまった。



 

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