拍手ありがとうございます! 以下のお話は、angel honey./エピソード3の、22話目のあたりの春喜サイドのお話です(^^) よろしければお楽しみくださいませ★ angel honey.【side:haruki】 「あー。クソッ」
ヒメとの電話を終えて、オレは頭をガリガリとかく。 我ながらダメすぎる。 ヒメのコトを支えたいのに、ヒメに頼るようなコトを言うなんて。 頼ってよって言っときながら、オレのほうから会いたいとか言うって、マジでどーなの。もお。 ヒメがオレと会いたくなくて時間を作らないでいるワケじゃないことぐらい、分かってる。 (気ィつかってくれてるんだよね…) そりゃ、セリフは覚えなきゃなんないし、撮影だって毎日のようにあるし? 時間があるのかって聞かれたら、素直にウンとは言えないけどさ。 でも、ヒメと話もできない、会うのもダメっていうんじゃ、再会するまでと何も変わらないじゃんか。 もっともっと、ヒメと話したい。 できるなら会いたい。 (ホントは毎日でもカオが見たいんだけど……) さすがにそこまでは言えない。 だって、すげーウザいカレシになっちゃうし。 「こんな時、ヒメぐらいの歳のヤツってどーすんのかな……」 思わず呟いて――スタジオにいる、共演者の一人を見てしまうオレ。ビシッとスーツを着こなした先生役の俳優さん――オレから見て、だいぶ先輩の俳優さん――は、スマートな手つきで差し入れのコーヒーを飲んでいた。 (あー…オレもいつか、あれぐらいちゃんとした大人にならないと) 現実には有り得ないコトだけど、もしヒメと付き合ってなかったら、多少自分がガキっぽくても気にしなかったと思う。オレの置かれた環境は、少なくとも最低限の社会ルールさえきちんと守れていれば、それほどうるさく注意されるような世界じゃないからだ。 でもヒメと付き合うなら、この先も付き合い続けたいなら――子供のままじゃダメだ。 (ヒメに相応しい大人の男にならなきゃ…) オレのせいでヒメが恥ずかしい思いをするなんて、そんなの耐えられない。 (あんまし会いたい会いたい言ったら、やっぱガキだと思われるよなあ。つーか、カッコわる…) いつもいつも、ヒメはオレに言う。 わたしは大丈夫だから、って。 でも、そんな言葉をもらっても、オレはちっとも嬉しくない。 (だってオレはちっともダイジョーブじゃないんだもん) 会いたい、寂しい、って。 そう言われた方が、ずっと嬉しいのに。 ヒメはなかなか、そういう言葉を口にしない。 会いたくないワケじゃないとは思う。でも、ヒメはいつもオレの立場を優先させようとする。オレ個人ってよりは、俳優としての市ノ宮春喜を守ろうとするあまり、いつだって一歩引こうとする。 だから結局、いつもオレから言ってしまう。 「ヒメに会いたい」 オレの言葉は、ヒメにはどう聞こえてるんだろう。 オレの押しに負けて承諾してくれてるだけだったらどうしよう。 (つーか、何よりも子供のワガママだと思われてたらどうしよ…) 会って、顔を見て、ヒメの声を聞いて、手を繋ぎたいんだ。ムリに何かしなくていい。並んで座っていられれば、それだけで幸せになれる自信がある。 「ヒメのご飯が食べたい」 さっきも、いつも通りに軽めにサラッと言っちゃったけど、あれは精一杯の演技で。 ホントはいつだってドキドキしてるんだ。 ヤダって言われたらどうしようって、バクバクなんだ。 …思いを口にするたびに、オレがこんなにも緊張しているだなんて。 ヒメが知ったらビックリするかもしれない。 |
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