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  少しでもお礼の気持ちをお伝えできれば、と思い仕上げた即興文ですが、
  想いが伝わってくれたなら幸いです。
    
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  「礼のひとつくらい言えないのか」

  「俺は、言葉の安売りはしないタチなの」
  
  二人の間に出来てしまった物質的な距離に、そっぽを向いた練の言葉に、龍太郎は溜め息をついていた。

  楽しく飲んでいたのに。
  とても、とてもいい気分だったのに。

  売り言葉に買い言葉。
  すっかり沈んでしまった空気が肌に刺さって、練はほんの少し悲しくなる。
  
  もう今夜はこのままお開きになってしまうのだろうか。
  貴重な逢瀬だというのに。
  煙草の煙を吐き出す息に隠して、練も重い溜め息をひとつ。

  どうしよう。
  泣いてしまいそうだ。




  「お前は、素直じゃない」

  すぐ傍に、龍太郎の声。

  「俺はあんたのそういう嫌味くさいところが大嫌いだ」

  練の身体を抱き寄せる、大きくあたたかい腕。

  練は引き寄せられる強さに逆らうことなく、龍太郎の胸の中へと自分の身体を預ける。
  火がついたままの煙草を片手に、煙草が燃えて、灰になって、テーブルの上を汚していくことにも気付かない練は
  どうしたって素直になれない自分を持て余していた。

  もっとうまくやれるはずなのに。
  空まわりしてばっかりだ。

  龍太郎の手が、練の指先に挟まれた煙草を奪っていく。
  両の手の自由を得る練は、龍太郎の身体を抱きしめかえす。

  「もうこの話はしまいにしよう」

  怒っているわけでも、呆れているのでもない龍太郎の声は、とても優しい。

  想いを言葉にする大切さくらい、練にだってよく分かっていた。
  伝えたい想いなら、こんなにも胸の中にあるのに。
    
  
  結局龍太郎への返事はなにひとつ出来なかったけれど、
  代わりに練は間近で龍太郎の顔をみつめて、彼の口唇へとキスを送った。
  

  
  



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