「晋助さま、またあれ見てぼうっとしてたッス。」 「あれ?」 「ショウヨウセンセイ?の塾の指南書。」 「ああ、いつものことでござろう。」 「・・・ねぇ、万斉。」 「ん?」 「もういない人を想い続けるって、どんな感じなんだろう?」 ア ネ モ ネ 言いたくても言えなかったのは、自分の弱さ。 過ぎ去った日々に思いを馳せれば、 薫りたつのは、あの日の君で。 (そう、それは憧憬) けれど、抱き締める腕はもうない。 君はもう、いない。 僕らは焼け野原に残された雑草のように、 身を寄せ合うことを許されず、 実を結ぶことさえ困難で、 ただ生きるという自然の摂理の中、 立ち尽くしていた。 君が遺したものは、 次の世代を担う種子ではなく、 今の時代を憂う声で、 その美しい魂の響きは、 雑草に相応しくない大輪の花のように、 今もこの、心の奥に沈んでいる。 (そう、それはアネモネの如く) 「ちょっと、万斉。聞いてるッスか。」 「聞いているでござる。」 (咲き誇る) 「・・・知らぬ。」 終 万斉さんにも忘れられない人がいたらいいなぁ、 という、単純な妄想から。あと、詩的にしたかった。 温かな拍手、ありがとうございます。 |
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