拍手お礼ss(わた) ? 炎山メイン
〈happy Halloween!〉
『炎山様、本日の業務は以上です』
「わかった…お前もご苦労だったな」
10月30日、時刻はもう少しで次の日、という深夜。
例に漏れずのハードワークぶりに俺は深々とため息をついた。
椅子に深く身を沈め、メガネをデスクに放り出し
PCディスプレイのブルースにほんの少しだけ笑みをおくる。
「流石に疲れた。これで朝にはまたアメロッパにとんぼ返り、か?」
『はい。少し冷えるとの予報ですので、お気をつけください』
「あぁ」
仮眠をとって、朝になったらアメロッパへ。
前々から頭に入れてあっても疲れがたまると少し記憶の方も危うくなる。
その点も含めてブルースはよく出来た秘書だ。
彼にもう一仕事…メールの仕分けを任せて軽く目を瞑る。
アメロッパに行ってからの予定はなんだったか、
その後の日程は、会議の内容は、取引先への連絡は、など。
少し予定があいたら連絡を入れろとの光からのお達しだったが
さすがにそうも言っていられないだろう。
…冬にはなんとしてでも休みをもぎ取らねば。
少しばかり憂鬱な気分でまたため息をついたところに、
ブルースが控えめに声をかけてきた。
『炎山様…只今、31日になりました。このメールをお渡ししても問題ないでしょう』
時刻が真夜中を示し、デジタル時計のアラームが静かに短く鳴った瞬間だった。
ブルースの言葉の訳がわからなくて思わず目を開く。
やわらかく微笑むブルースが開いたメール画面には、非常にストレートなメール。
差出人:光 熱斗
題 名:かぼちゃケーキ!
通常サイズよりかなり大きな黄色のタルトケーキと、
それを満面の笑みで差し出す光の写った画像。
仕事があいたらいつでも来いよ!
ママがいつでもケーキ作ってくれるからな。
ハッピーハロウィン!!
俺とは違って八時には寝ていそうなあいつが
…眠いだろうに、必死になって打ったであろう本文。
いつもよりずっと簡潔な文章でありながら、憂鬱な気持ちは、どこかに飛んでしまった。
「…そうか…今日はもう、ハロウィンだったか」
『光なりの気遣いでしょう』
「ふ…ありがたいことだ」
気恥ずかしい気持ちに、思わず少しだけ頬がゆるむ。
日付も時間も俺にとっては単なる仕事のスケジュールを示す目盛り。
ほんの少しだけそれを忘れて、こちらも簡潔な、
けれど、ストレートな文面のメールを返した。
―Happy Halloween?
ハッピーハロウィン!
拍手、ありがとうございました!
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