『恋のサマーセッション』


 ねえ? 聞こえてなんかないよね?
 俺の心臓が、ドキドキしてる音。
 何気ない顔してるけど、今にも弾け飛びそうなんだ。

 いつだって、キミといると・・・・・・




「これだよね? 欲しいって言ってたCDって」

 マコが左手で指差したCDはつい先日発売になったモノ。
 俺が好きなアーティストのCDで、まだ手に入れてないモノだった。
 俺は右手でそれを取り、マコにも見えるようにしてジャケットを見た。
 買うつもり、いや絶対買うんだけどまだバイト代が入ってないから見ることしかできないCD。けれどうれしいことに店内でCDに収録されてる曲が流れる。

「♪〜〜♪♪〜〜」

 曲を口ずさめばマコが楽しそうに俺を覗き見た。

 今までにない距離の近さ。
 それだけのことが、うれしかった。

 ずっと好きだったマコと付き合うことになって、初めてのデート。
 今までだってふたりっきりで出掛けたこと、あるのに。
 一番近くにいたくて、誰よりも一番近くにいたくて。
 でも、例えるなら俺とマコとの間には30cmのものさしがあった。
 けれど今は肩が触れ合うような距離。
 30cmのものさしなんて、どこかにいってしまった。
 少し動かせば手だって触れる距離。

 ・・・・・・繋いで、いいよ、な?

 ドキドキ、ドキドキしながら、でも思いきってぎゅっと握ってみた。

「イタッ」

 その言葉に手を離す。
 緊張で力加減が出来なかったことに、顔が赤くなる。

「悪い」

 小さく謝って、逃げるようにCDを元の場所に戻すと

「クシュッ」

 俺の謝った声よりも小さくクシャミの音。
 そういえばえらく店内にエアコンが効いている。
 Tシャツの上にデニムのシャツを羽織っていた俺はそれを脱ぐとマコに差し出した。

「え、い、いいよ」

 手を振って断るマコ。

「夏風邪はバカが引くんだから、マコちゃんは気を付けないとね♪」

 笑いながらそう言って俺はマコの肩にシャツを掛けた。

「タカヒロには言われたくないよ!」

 なんて憎まれ口きいて、でも素直にシャツを着ると

「ありがと」

 少し顔が赤いのは、やっぱりマコも照れてるから?
 そんなマコを見て俺もまた顔に血が昇ってくるのがわかる。

 ええい! 恥ずかしついでだ!

 俺はそう思って手を繋ぐことにリベンジ!!


 ・・・・・・のはずだったけど、そんな俺の出鼻をくじくようにそっとマコから手をつないできた。
 俺みたいにギュッとじゃなくて、そっと、そおっと。

「へへへへ」

 更にテレて、笑いながら俺を見上げるマコは本当に可愛くて。
 そんなマコが俺の彼女なんだって思うとすっごくうれしくて。

「へへへ」

 俺もマコに笑い返して、繋いだ手を前に後ろに大きく振った。


 早鐘のようにドキドキしてる鼓動。
 その鼓動に合わせるようにして手を振っていると

 ガッシャン!!

「「ああ!!」」

 繋いだ俺たちの手が商品に当たってしまった。
 幸い商品は棚から落ちなかったけれど。

「ドジ」
「お互い様」
「ば〜〜か」
「それこそお互い様」

 いや、それってお互い様ってツッコミでいいのか?
 心の中でツッコんで。

 でもきっと、このドキドキはお互い様だよ、な?





「稲葉君と松本君」ですvv
 松本君、マコちゃんとのはじめてのデートですvv
 初々しい?(笑)
 いや〜久しぶりに書いたなぁ〜



ついでに一言ドゾ♪(拍手だけでもOK!)

あと1000文字。