今度からブタ野郎って呼んでいい?



「…はい?」

「だから、豚野郎って呼んでいい?って言ったの」


聞こえなかった?と目の前の男は相変わらず爽やかで嘘臭い笑顔を浮かべながらそう、のたまった。(何故!)


「あ、あの、佐助さん」

「何、豚野郎」

「……、」

「(可愛いなぁ)」


話し掛けるだけでも挫折しそうになるのをぐっと堪える。
しっかりしろ、ここで負けたら俺はこの先ずっと豚野郎だ。


「お、俺…」

「うん」

「何かしました?」

「してないよ」


精一杯の勇気を振り絞って言った言葉に返ってきたのは何とも素っ気無い言葉で。(しかも何で?とまで言ってきやがったよちくしょう!…嘘です、嘘。だからそんな怖い目で見ないで)


目線を逸らさずにこっちを見ている佐助さんに耐えられず、目線は自然と文机の紋様へと向かう。

別に今に始まった事ではないのだ。
何かにつけて佐助さんは俺に嫌がらせを仕掛けて来る。
そのくせ他の人には嘘みたいに優しいんだから理不尽だ。(俺は団子もらったことも片付けを手伝ってもらったこともない)(そんなに俺が嫌いなのか)(忍のくせにねちねちと…あ、忍だからか)


まあそのうち飽きてくれるはずだからそれまでの辛抱か、とひっそりため息を吐いた瞬間、ずっと笑顔でこっちを見ていた佐助さんが口を開いた。


「勘違いしないでよ」

「はい?」


思わず顔を上げれば予想外に真剣な目とかち合う(なに、)


「脳天気な顔見てるとつい歪ませたくなってさー」

「………」






その表情、
結構そそるんだよね

(こいつやっぱり俺のこと嫌いだろ!)



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